グループの力で最高位の難問に挑む
視聴覚教室に集まる特進Sコース1年1組の41名。まず最初の10分間は、生徒が独力で問題を解く「解答方針策定」の時間。この日は、2005年京大二次試験で出題された関数改題問題に挑戦した。論述形式の非常にハイレベルな内容だ。
「グループ学習では、独力で解くのが困難な問題に取り組みます。生徒が協力して解法のヒントを見つけたり、方針を立てていく。集団の叡智で問題にぶつかっていくんです」と語るのは、数学を担当する須ノ内敦先生。1組の担任でもある。
続く15分間は「グループ解答作成」。生徒は5名のグループになって解き方を話し合う。先ほどまで水を打ったように静かだった教室が、グループ討議に入った途端、グッとにぎやかになった。先生は教室を回りながら、各グループにヒントを出したり、質問に答えたりする。
「生徒は互いに話すことで論理を整理できるんです。こんな考え方があるのか!同じ年齢なのに、こんな発想ができるのか!と刺激を受けてほしいんです」
解答用紙には二色のペンで書き込んでいく。自分で考えた部分は黒字、グループで討議した結果は赤ペン。どこで間違えたのか、どこまで自力で考えられたのかを一目で判別するための工夫である。
口頭で伝えることによりプレゼンテーション力を養成
最後の10分間は「解答解説」。配られた解答と解説を見ながら、生徒は正解へのプロセスを確認していく。解説を読んでもわからない場合は、グループで理解できるよう助け合う。そして最後に、各自が演習の感想や疑問点を書き添えて提出する。須ノ内先生は、一人ひとりにコメントやヒントを書き、答案用紙を返却していく。
「特別講義の問題は非常にハイレベルなので、正解できる生徒はまずいません。10%できれば良い方でしょう。とにかく1年生のうちから難問に挑むチャレンジ精神を養ってもらいたいんです」
一方の「ペア学習」では、一人でなんとか解けるレベルの問題を扱う。生徒は2人1組になり、相互に答案を採点。わからない部分は互いに質問をし、説明しあう。口頭で表現することにより、思考を整理するトレーニングになり、それを伝えるプレゼンテーション能力の養成にもなるのである。
|
|
ワークショップで将来への目標設定を明確に
こういった演習に加え、年に3回、ワークショップを実施するのも大きな特徴だ。5月の第1回ワークショップには、コーチングの専門家を招いた。生徒たちに将来の目標設定、そのためにはどんな計画を立案すれば良いのか、という課題を出し、コーチとともに考えを固めていった。
「入学時には進路が漠然としていた生徒も、具体的なビジョンを考えることで将来像を描きやすくなるようです。また、生徒間で刺激を受けるため、よりレベルの高い大学を目指そうと奮起する生徒も少なくないですね」と須ノ内先生は話す。
ワークショップには現役の大学生もスタッフとして加わった。先輩から高校時代の勉強法や受験対策など、具体的なアドバイスを聞くことで、受験への強固な心構えができるという。
創立108年目にして大きく動き出した関西大倉高等学校。その頂点を担う特進Sコース、今後の動きから目が離せないように感じた。
|
|