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中学・高校受験:学びネット

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金蘭会高等学校・中学校

 
  最新のデジタル教科書を導入 ICT化で高度な英語教育を実践
明治38年創立、100年を超す歴史を誇る金蘭会高等学校・中学校。女子教育の伝統を踏まえた上で、近年は情報教育・英語教育に力を入れている。昨年10月、最新のデジタル教科書を導入。授業の高度化に取り組んでいる。いち早くICT化を図った授業は、今後、大きな動きが予想される電子教育のモデルとして、各方面から注目を集めている。

校 長: 藤林 富郎
住 所: 〒531-0075 大阪市北区大淀南3-3-7
電 話: 06-6453-0281
交 通: JR環状線「福島」駅下車、北へ徒歩8分。JR東西線「新福島」駅下車北へ徒歩10分、阪神電車「福島」駅下車、北へ徒歩10分
学生数: 中学校 250名
高等学校 438名 (2010.9.1現在)
ホームページ: http://www.kinran.ed.jp/

 

授業のロスタイムが皆無に
生徒の集中力が途切れない授業を実現

 2009年、文部科学省が「スクール・ニューディール構想」を発表したことは記憶に新しい。21世紀の学校にふさわしい教育環境の充実を目的としたこのプラン、重点項目に掲げられたのが「教育現場のICT化」である。情報通信技術を活用することで、より高度な授業を行い、学力向上につなげていくことを政府は急務の課題としている。

 この構想に伴い、全国の学校現場に校内LAN 、電子黒板といったデジタルツールが続々と導入されているが、教育のICT化を語る上で欠かせないのが「デジタル教科書」の存在だ。紙製の教科書をデジタルデータにすることで、わかりやすく、より高度な授業が可能になると言われている。金蘭会中学校では、昨年、このデジタル教科書を英語の授業に導入。授業改革の面で大きな成果をあげている。教育関係者からの問い合わせも多いという授業を取材した。

 「Good morning !」。英語担当の中垣優子先生のハツラツとした声で、中学1年の授業は始まった。教室前面のホワイトボードに映し出されるのは、教科書の紙面。プロジェクターで投影されるデータである。先生が専用ペンでボードに触れると、瞬時に音声が流れ出す。英文を朗読するネイティブスピーカーの声だ。生徒は手元の教科書(紙製)を見ながら耳で音声を確認。発音をチェックしていく。この日の単元は、家族の呼称。音声が終わると、先生はボードにタッチ。すると画面は「単語のページ」に切り替わる。「uncle」「grandfather」「daughter」と新出の単語がフラッシュカードで次々と表示。「Please Say This in Japanese」。生徒は元気よく単語の和訳を答えていく。

 デジタル教科書の最大の特徴は、ビジュアルと音声の融合である。ボードの一部を専用ペンでなぞると、その部分の音声が瞬時に流れる。これは上部に取り付けられたインタラクティブユニットがペンの位置情報を読み取り、該当箇所の音声を瞬時に再生するという仕組みだ。「導入以前は、パワーポイントで作った教材を使っていたんです。音声はCDで流していたので、画面に合わせて英文を呼び出すのに苦労しました。教材の準備だけでも本当に大変でしたね。今はその労力を指導法や教材の研究にあてられます」と中垣先生は導入の効果を語る。

紙の教材を併用することで
総合的な語学力の定着が可能に

 授業は、非常に心地よいテンポで進んでいく。従来型の授業の場合、教員が教材を準備したり板書を行う時間がどうしても発生してしまう。それがロスタイムとなって、生徒の集中力が切れてしまうことも少なくなかった。しかし、デジタル教科書ならば、ボードにタッチするだけでアイテムが切り替わる。この即時性がリズムを生み出し、飽きさせない授業が展開できるようになっている。
「中学生が集中できるのは10分が限界です。ですからいろいろな活動を通じて、いかに密度の高い授業を行うかを常に考えています。様々なアプローチで授業を組み立てることで生徒の集中力が高まっていくのではないかと思います。」

 実際、生徒たちの集中力は相当なものだ。音読の際は手元の教科書をじっと見つめ、単語練習になると、机上の辞書を開き、素早く新出語を調べる。また、暗唱チェックになると、さっと二人一組になり、自主的にトレーニングを始める。一瞬たりとも教室の空気がだれないのである。教室の一角で見学しているだけで、誰もが楽しみながら意欲的に授業に取り組んでいるという空気が伝わってくる。

 「授業を行う上で最も良くないのは、教室の空気がだれることです。デジタル教科書を使うと、生徒の注視度が高まり、集中力も違います。気持ちが乗っているな、とわかりますね」

 デジタルツールを導入する場合、不安視されるのが「手書きの希薄化」である。ライティング、スピーキング能力がおろそかになるのではないか、という声もある。しかし、この点も見事に払拭されている。英単語の書き取り、本文の暗唱テスト、新出単語を使ったクロスワードパズルなど、手作りのプリント教材が随所に挟みこまれているのだ。5分間リーディングを行ったら、次は英単語を書き取る。その後、デジタルボードで文法を説明。また、ノートに筆記。このように、デジタルとアナログをうまく組み合わせている。

 「デジタル教科書はあくまでもツールのひとつです。デジタルに依存すると、生徒はついてきてくれない。文法や単語などの基礎をインプットした後は、いかに定着させていくか。反復学習こそが英語習得のカギです。そのためには手で書く、自分の言葉で話すという基本は絶対です。その部分は変わりません」と中垣先生は語気を強める。新旧両方の技術をほどよく組み合わせることで、より高度な授業を可能にしているように感じた。

全教科デジタル化を目指し
教員は指導法の研究に取り組む

 グローバル化が進み、ますます重要性が高まる一方の英語教育。金蘭会中学では、通常の授業に加え、ネイティブスピーカーによるオーラルイングリッシュの授業も行っている。10数名の少人数クラスで3年間継続。また学習発表の場として、校内英語暗誦大会も実施。総合的な語学教育に取り組んでいる。

 関心はあるものの、設備の導入には相応の費用がかかるため、本格的なICT化に踏み切れない学校はまだ多い。そんな中、全教室にデジタルボードやプロジェクターを設置し、いち早くICT化に着手した金蘭会中学。デジタル教科書を使った授業は、小学生や保護者にも公開しており、体験スクールで誰でも体験することができる。「小学生のみなさんは最初は驚きますが、非常に興味を持ってくれます」

 今後は他教科への拡大を準備中だ。「新しい教材をいかに使いこなすか、教員たちも研究に余念がないです。自主的に勉強会を開催したり教材を開発しています」と中垣先生は語る。
デジタルツールを取り入れることで、今後、変革が予想される日本の教育現場。いち早く、その効果を発揮している金蘭会中学は、語学教育において、一歩ならず数歩先を歩んでいる。

 
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