生徒目線で着実に
改善を重ねる
2007年に生徒、保護者を対象に初めて実施された学校満足度調査では、厳しい意見も少なくなかった。中でも進学指導に対する要望は多く、学校は早期の改善を迫られることになった。
最初に着手したのは、受験に特化した早朝、放課後講習。それに夏期講習(前後約1か月)、冬期講習(1週間)、春期講習(2週間)のシステム化であった。また、進学へのモチベーションをあげる意味合いから、それまでは実施していなかった海外研修(希望者のみ)やイングリッシュキャンプといった行事も取り入れた。こうした改善が比較的スピーディーに行われたのは小規模校ならではの強みと言える。
2008年からは授業評価も実施してきたが、昨年はその回数を2回に増やしている。生徒がすべての教科において、あらゆる角度から授業を評価していくもので、能美校長は「分かる授業、やる気の出る授業」の実現に向け今後も継続の意向を示している。
評価シートは、@生徒一人ひとりの進度を把握し授業が進められているか。A指導に対する先生の熱意が感じられるか。Bその日の授業の要点、ねらいがはっきりしているか。C注意すべきは注意し、規律が保たれた授業がなされているか。Dプリントやワークシートの配布、ノートの点検をきちんと行い、個別指導にも対応しているかなど、設問への回答欄と自由記述欄を設けている。
この評価を1学期末に行い、その結果をもとに教員は改善計画を校長に提出。その後、計画通りに改善がなされているか再度、2学期末に評価が行われる仕組みだ。
生徒の声を傾聴するだけでなく、教員間では教科ごとに授業を録画し、それをもとに改善点を話し合う場も生まれている。具体的な取り組みはもちろんだが、評価制がもたらした一番重要な成果は、生徒の目線に立とうとする教員の姿勢だったのではと、能美校長へのインタビューから伝わって来た。
家庭的雰囲気の中での
進路指導、受験対策
高校に進学したばかりの生徒が、進路を決定づけるうえで大きな助けとなっているのが、卒業生による進学ガイダンスだ。将来、目標とする職業に就くために適しているのはどんな学部か。また、その中で何を専攻すれば適当かといった点について、実際に大学で学んでいる先輩のアドバイスは実効性が高い。また、何より目標に向かって前を行く先輩の存在ほど、学習に対する動機づけとして有効なものはない。
高1段階から将来像を具体的に描き、2年の終わりまでに進路を決定する。3年の7月になると受験する大学と学部を絞り込んでいく。いわゆる志望校決定の時期だ。大学受験ではその後、半年の間に志望大学を変えざるを得ないケースも多いが、愛徳学園では7月時点の志望校へ進学を達成した生徒が75%と高い。
その要因について、能美校長は「担任と進路指導部が生徒一人ひとりに進路指導マップのようなものを作成し、綿密な指導を行っています」と話す。
一方、保護者に対しても受験ガイダンスの丁寧さを強調する。近年、受験パターンが複雑化し、毎年のように変化するため保護者の理解が追いつかないこともしばしばである。その生徒にとってメリットある受験方法を選択、提示することは担任と進路指導部の連携なしには実現不可能だ。この点、受験後に保護者から感謝の手紙が届くほど念入りなガイダンスが行われている。
一般に受験が迫ってくると、生徒、保護者へのガイダンスではいかに受験を勝ち抜くかという方法論が中心となり、親子間に葛藤を生むことも少なくない。その点、愛徳学園では生徒の意向を中心に、両者が納得できるよう両担任を含めた四者面談を丁寧に行ってきた。その結果、「進路を決定していく中で、それまではスムーズとはいえなかった親子の関係が修復されたこともありました」と、思わぬ効果をあげている点は、家庭的な雰囲気の中での教育をモットーとする“愛徳らしさ”といえるだろう。
丁寧さ、きめ細やかさといえば、今春、大阪大学基礎工学部システム科学科に現役合格した生徒の例がある。文系への進路希望が多い同校では、物理を必修科目として選択する生徒は極めてまれだ。昨年はこの生徒1人だけだったが、授業として成立させている。
ほかに兵庫県立大看護学部、神戸市外国語大国際関係学部、慶應大文学部、上智大文学部、関関同立の立命館大文学部、関西学院大総合政策部など、他各大学に合格者を出している。また、過年度生ではあるが、香川大学医学部・徳島大学歯学部への合格者も出している。
少人数制のため、数的な派手さはない合格実績だが、生徒の志望をかなえる取り組みにおいては特筆すべき事例は多い。 |
知りたいことが聞きやすい
説明会とオープンスクール
同校では中学校入試の説明会を6月5日・10月9日・11月20日(いずれも午前10時半〜)に、オープンスクールを8月28日に実施予定だ。入試説明会では学校生活全般にわたる説明後、部活動の様子を参観することもできる。オープンスクールではスペイン語教室、サイエンス教室、茶道体験、デザート作りなど体験型メニューも豊富。
また、卒業生や卒業生の保護者による体験談も披露されるなど、参加者が知りたいことを質問しやすい工夫がされている。「気に入ってくださると、すべての会に参加される親子もいらっしゃいます」と能美校長。家庭的な雰囲気はこうした場でも感じられるようだ。
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