得意分野を生かし
将来を描く中学生活
JR福島駅から徒歩8分。高層ビルが立ち並ぶビジネス街の一角に、そこだけは緑が目立つ上福島北公園、浦江公園があり、二つの公園に囲まれるように斬新なデザインの校舎が目を引いている。金蘭会高等学校・中学校の新校舎は竣工から2年が経ったばかりだ。各教室には最先端の設備が整い、ホールや廊下は自然光とそよぐ風が快適なように設計されている。学び舎として恵まれた環境であることは、訪問者の共通した感想だろう。
同校の創立は1905年。高等学校に進む女子が一握りだった時代から今日まで女子教育一筋に歩んできた。社会の変化につれ、女子教育もまた変化を余儀なくされてきたが、今日ほど各分野で活躍する人材として、命を産み育む家庭人として、社会の女性に対する期待が大きい時代はないだろう。
同校ではそうした社会的要請に応えることと、生徒が描く夢や目標達成を車の両輪ととらえ、双方を成り立たせるための改革を行ってきた。今年も中学校で「自己アピール型」入試(定員15名)の実施に踏み切る。
スポーツに秀でている、作文で受賞歴がある、英検、漢検・日本語検定などの資格を取得している、書道、絵画が得意であるなど一般教科試験よりも得意分野を生かせる選抜方法だ。特技はあるが、受験準備はしてこなかったという生徒に朗報だろう。多様な才能が集うキャンパスで伸び伸びと可能性にチャレンジできるのではないだろうか。
英語は金蘭会中学校が重点を置く教科で、これまでも中1からネイティブ講師によるオーラルイングリッシュの授業を10〜15名で実施してきた。今年9月からはさらに、少人数クラスを習熟度別に編成し、より高度な授業、より丁寧なサポートを行っていくとしている。
中学校ではほかに「7つの習慣J」という教育プログラムを昨年から中1に導入。生徒保護者から好評を受け、今年から中1〜中2と対象学年を広げている。同プログラムは、アメリカのスティーブン・R・コヴィー博士がさまざまな分野で活躍した著名人の「共通する習慣」を体系的にまとめたもので、習慣の実践により、生活にやる気や主体性を持たせることを目的としている。
プログラムでは、10年、20年後の未来を「未来マップ」として描き、将来像を形づくっていく授業もある。中学段階で将来像は毎年のように変わって当然だが、繰り返し描くことで、より具体的に将来を考えるきっかけとなりキャリア教育の一環にもなっている。
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勉強合宿と高大連携で
志望校にアプローチ
高等学校では国公立や難関私大を目指す「特別進学」、個性を伸ばし幅広い進路を切り拓く「総合進学」、主に併設の千里金蘭大学看護学部への進学を目指す「看護進学」の3コースが設置されている。
「看護進学」は昨春開設されたコースだが、提携する住友病院で救急医療から癒しの現場までを見学し、ベッドメイキングや包帯を巻くといった体験学習も1学期から始まっている。また、千里金蘭大学との高大連携授業として高3で週2時間、看護学部の授業を受けているが、同大進学後は大学での単位として認定されるメリットは生徒にとって魅力的だろう。
「総合進学」でも、併設大学の授業を週2時間受けることができるが、こちらは選択制。「特別進学」とともに進路希望や興味関心によって関西一円の大学の出前授業を受けることもできる。最近では同志社女子、立命館、関大などの授業があった。関大とはパイロット校提携も行っており、6学部に8人の推薦枠を確保(2010年度)している。
今夏より高3生の勉強合宿も始まった。藤林富郎校長は「受験勉強は孤独じゃないんだ、みんなもがんばっているんだ。と、実感します。夏休みには自主自律的に学習が進められるよう始めることにしました」と3泊4日の合宿の意義を説明した。合宿は1週間の校内の夏期講習が終わった翌日に大阪府内の合宿所で行われる。各科の教員がスタンバイし質問などに備えるが、自習が基本。受け身ではない学習姿勢をつけることがねらい。
双方向コミュニケーションで
理解しあう教育活動を展開
今春入学の中学1年生から週3回の給食が始まった。給食は成長期に栄養バランスのとれた食事を提供できるメリットがある一方で、与えられるものという一面を持っていて、食に対する自立した考えを育むという観点からは最善ではないとの考え方もある。さまざまな意見を聞いてから導入したいと、学校は意見交換の場を設けた。
「保護者には、お弁当は親子のコミュニケーションの一つのチャンネルという方もいれば、家庭の味、家庭文化を大切にしたいなどさまざま意見がありました」と、藤林校長は給食導入までの経緯を話す。結局、給食とお弁当のそれぞれの良さを取り入れ、週3回の実施となったが、そこには学校と保護者が互いに理解し合おうとする場があった。
取材を通して、生徒、保護者の意向に耳を傾け、情勢を読み取って変化していける柔軟な姿勢と、百余年の間変わることのない女子教育への使命感が伝わってきた。
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