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中学・高校受験:学びネット

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追手門学院大手前中学校・高等学校

 
  伸びの大敵「固定観念」の払拭で あきらめない進路指導を実践
中学受験は偏差値ではなく、その生徒の能力が最も発揮できる学校を選ぶべき。そう話すのは追手門学院大手前中学校・高等学校の金沢良一教頭。予備校で京大進学クラスの受験指導講師20年の経験から、志望大学進学のための仕組みづくりを次々に実践中だ。本当は誰もが持っている本来の目標をあきらめさせるのは、自分や周囲の固定観念。同校の進学指導はその固定観念を払拭することから始まる。新しく生まれ変わろうとする伝統校を取材した。

校 長: 南 登章生
住 所: 〒540-0008 大阪市中央区大手前1-3-20
電 話: 06-6942-2235
交 通: 地下鉄谷町線「天満橋」駅3番出口より徒歩7分/京阪電車「天満橋」駅14番出口より徒歩7分/市バス「京阪東口」バス停より徒歩1分/JR東西線「大阪城北詰」駅2番出口より徒歩10分
学生数: 中学校 512名
高等学校 462名 (2009.9.1現在)
ホームページ: http://www.otemon-js.ed.jp/

 

基礎学力の徹底が
進路の幅を広げる

 コース制全盛といわれる時代に、習熟度による「特進」と「進学」のクラス設定(各2クラス)だけを行っているのが追手門学院大手前中学校と同高等学校だ。かつてコース制をとっていたが、その運営のために教員の負担が増すなら、本末転倒。教員の負担を減らし、充実した授業を行っていこうとの考えから4年前に同制度を撤廃した。

 中学校の「特進」と「進学」は成績により学年ごとに再編成され、基礎学力の定着を第一に考えた授業がクラスに応じて展開されている。先取り学習はせず、徹底的に反復学習を行うことで、コース制をとっていた頃より中学の学力は伸びを示している。教えられるばかりでは成績は上がらない。それを身に付ける時間が必要とのことで、自学自習能力を育成してきた結果、「よく(自宅で)勉強するようになった」という保護者の声が聞かれるようになり、今後の進路選択の幅に期待を抱かせている。

 中学段階ほど学力の伸長に差が出る時期はない。そして、それはひとえに基礎学力をいかに付けるかにかかっている。そのために中学校を選ぶのが中学受験という見方もある。

 20年の予備校での受験指導講師の経験を持つ金沢良一教頭は「中学受験で少しでも高い偏差値の学校を選択することが必ずしもいいとは思わない。それよりも、自分自身の能力が最も発揮できそうな学校を選んだ生徒が伸びる」という。さらに「二番手、三番手の学校でも生徒に高い意識を持たせることができれば、能力は伸びていく」とつけ加えた。

 要は多感な思春期に、その生徒にとって“水を得た魚のような学校生活”が、心身の発育とその後の学力の伸長に大きな差をつけるということだろう。さらに金沢教頭は「中学時代は子ども同士、人間関係を学ぶことに時間を割いてほしい。中学生をが遅くまで残して授業や補習って勉強することには反対」と、学力伸長と心身発育のバランスの重要性を強調する。

自主性を尊重した
課外授業、自習クラブ

 中学時代、学習や生活面において基本的な指導を十分に浸透させる同校の方針は、高校の発達段階では「個性の尊重」をより重視した教育方針を打ち出していく。何を選択し、どう行動し、どんな進路を選択するかは生徒の意識にゆだねられるべきという考えだ。

 進学指導について金沢教頭は「子どもが望む大学に合格させるために進学指導はある。それがたまたま東大、京大というなら、必要な指導を行っていくだけ。学校が生徒の意思に反して学力で大学を勧めるわけではない」と話す。

 ただし、生徒の多くは自分の成績なら、これくらいの大学が妥当と固定観念を抱きがち。そういう生徒に対しては、大学を成績にあわせるのではなく、逆に進学したい大学に成績を追いつかせる努力をするようアドバイスがなされる。生徒の意識が改革されれば、受験へのスパートは自ずと早い段階で切られるからだ。

 そこで始まったのが、高2からの文理選択や、国公立大学か私立大学か、という選択に対して、高1では系列の追手門学院大学を皮切りに、大学のオープンキャンパスへの参加を促したり、高1の大学オープンキャンパスへの参加と「将来を考える日」と名付けられたキャリアガイダンスだ。卒業生が現在就いている仕事について話をする機会を設けることで、職業観の醸成を行っている。最近卒業したばかりの大学生が、各大学各学部の紹介をすることもある。

 高2〜3年生には、夕方6時30分〜8時まで、難関大受験生のための課外授業も実施されている。自主性を尊重する方針で参加は自由。「強制しない方が、人気のある講座とそうでない講座がはっきりと分かれる。つまらなくて分からない授業には生徒は出ませんから。教員の力が試され、教員も育つ」と金沢教頭。

 ユニークな取り組みとしては4月から立ち上げた「大学受験自習クラブ」がある。顧問は金沢教頭で、元旦と正月の2日以外はすべて活動日というクラブだ。現時点で高3生27名、高2生60名の部員が在籍している。常時参加している約30名の学力は、クラブ発足から2か月で伸びを実感できるほどという。長期休暇も8時45分〜17時45分までみっちり参加するもよし、部活のあとに半日参加するもよし、手すきの教員が授業をするのもよし、とすべて自主性に任されている。

 また、学校として添削教材(英・国)を一括導入したのも、新たな高校の仕組みづくりの一つだ。家庭で添削教材を使う生徒は多いが、実際に課題を終えても添削指導を受けない利用者は多い。英語、国語は数学や理科のように答えがはっきりしていないからこそ添削教材のメリットが生かされると導入した。

 以上のような高校での取り組み以外に中学では、「国語力」育成につながる朝読書が実施されている。学級朝礼前の25分間で、書籍は学級文庫より図書司書や担任などが推薦したもの。生徒には一日の始まりを落ち着いて迎えることができ授業への集中力アップにつながると好評のようだ。同校での読書活動は2001年から始まっているが、今年度、文部科学大臣より読書活動優秀実践校として表彰された。

可能性ある子どもに
応えられる学校に

 固定観念を払拭した生徒が、生まれ変われる環境が徐々に整いつつある。「以前は『は』の字も口にしなかった生徒が、『阪大を狙う』と言いだした。こんな生徒が10人出てくれば、空気が変わる」と金沢教頭は生徒の意識改革に期待を寄せる。予備校での受験指導を担っていた講師時代、自分をあきらめずに絶対的な学習量で、それまでは不可能と思われていた大学に合格した例をいくつも見てきた人なのだ。

 難関大に合格するかどうかは単に努力の差。中学受験の段階で人生が決まるなんてあってはならない。偏差値40で入学してきた生徒が望むなら東大、京大に合格させていく学校を創りたい。そう語る金沢教頭は「自学自習力」の育成や強制のない、特別授業や自習クラブに表れている「独立自彊」と自己能力を高めて社会への還元をはかる「社会有為」の本校の2つの理念の実践に、より踏み込んでいくと締めくくった。

 
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