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中学・高校受験:学びネット

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大谷中学校・高等学校

 
  理念貫き、進学指導に新風吹き込む全ての生徒に光あてるシステム構築
主要教科の授業を2人の教員が担当するバタビアシステムの導入から約半世紀。大谷中学校・高等学校ではシステムを再構築し、あらゆる学力タイプを伸ばす補習授業が定着している。受験生のニーズに応え、国公立大合格に絞った徹底指導が注目される高校マスタークラスの開設や高大連携による多様な学部への進学枠確保など伝統校ならではの底力を見せ始めた。時代を超え一貫した建学理念に新たな付加価値創造の機運が熟している。

校 長: 真城 義麿
住 所: 〒605-0965 京都市東山区今熊野池田町12
電 話: 075-541-1312(代)
交 通: JR奈良線・京阪京都本線「東福寺」駅より徒歩5分
学生数: 中学校 299名
高等学校 1096名 (2008.05.1現在)
ホームページ: http://www.otani.ed.jp

 

「人となる」ための教育を柱に
時代の要請に応える姿勢を堅持

 東本願寺「京都府下小教校」として開校した大谷中学校・高等学校は、130余年にわたり京都東山で親鸞聖人の教えを建学の精神に中等教育の一角を築いてきた。仏教教育により円満な人格の完成を目指す根本理念を不易とし、一方で時代の要請に応えるというバランス感覚を大切にしている学校である。

 校長の真城義麿氏に仏教教育の意義とその実践について尋ねた。まず、仏式で行われる入学式に続いて、新入生合宿での校長講話が、生徒にとって仏教の考え方を生活に取り入れる最初の機会となる。

真城校長が投げかける「皆さんは本当に人間ですか」との問いかけは、自分自身への注意喚起という点で生徒たちの意表をつく。実はこの問いかけこそが、親鸞聖人が説く「樹心(人となる)」を目指す第一歩となるのである。

人は誰も生まれながらにして、当然のように人間であると思い込んで育つ。だが、他人と協調することで新たな自分を発見し、周囲と力をあわせ、事を本気でやり遂げてこそ、初めて真の人間になるという考え方が、親鸞聖人の教えすなわち「樹心」である。
真城校長の問いかけを受け、生徒たちは「自分が人間である証明をどういう方法ですればいいか、本当に困った顔をする」という。そして、そこから130余年続いてきた大谷の真の人間創造のための教育が始まるのである。

 現代は進学実績など多くの付加価値が学校に求められる時代である。そのための努力は無論、惜しまない同校だが、付加も教育の本体である理念があってこそのもの。真城校長は「直近の未来の充実だけを目指す教育であってはならない」と教育理念とニーズへの対応のバランスを見極めている。

もっと伸ばす、下支えする
段階に応じた補習体制

 中学部長を務める梅垣道行教諭は、大谷中学校・高等学校の卒業生である。生徒としてバタビアシステムを経験し、現在はシステムを実践運用する立場にある。
  システムの名はニューヨーク州バタビア市の学校で、2人の教員が1つの授業を受け持つ授業形態を始めたことに由来する。同校では教科担当とクラス担任が一組となって、1960年から国語・数学と英語で導入している。(※国語は、数年前から書く力をつけるために、クラスをハーフサイズにして「表現」の授業を行っている。)授業を受け持つ教員のうち、1人は教科担当ではなく、その教科の「素人」であるという点がこのシステムを効果的に運用する、いわばミソの部分といえる。

 教科担当が教えていることを、担任が生徒の目線で見ていると、専門家が当たり前すぎて見過ごしがちな生徒のつまずきの原因が手に取るように分かることがある。これが一般化しているチーム・ティーチングとは異なる点である。

長い歴史を歩んできた指導法だけに、その運用は時に応じて改善が繰り返されてきた。現在は、週2日行われる放課後の補習授業で、習熟度に応じてすべての生徒にきめ細かに対応する体制が取られている。梅垣部長は「私が中学生の頃の担任指導(放課後補習)は、それぞれの担任の裁量で必要とする補習部分やそのボリュームを決めていましたが、現在はクラスの枠を取り払い、よりシステマチックに生徒の理解の段階に応じた補習体制がとられています」と説明する。

たとえば数学の補習授業では、習熟度別に3クラスに分けられるが、習熟度が高いクラスの生徒は、中2の終わりで大学センター試験の問題が解ける生徒もいるという。一方、習熟度に不安を感じている生徒に対しては、つまずきの原因を徹底解明し、一定以上の学力保証を行う補習内容となっている。
バタビアシステムを導入し約半世紀。奇を衒うことなく、ひとつのシステムに改善を加えながら、“下支えと上伸ばし”の学力保証を実践している。

国公立狙うマスタークラス
和気あいあいの中に厳しさ

高等学校で開設されたバタビアコース・マスタークラスもシステマチックな指導体制確立の一貫と捉えることができる。同校では2006年度まで国公立大を目指す生徒を対象にマスター生制度を設けていたが、2007年度からはより多くの国公立大進学希望者を対象にマスタークラスを開設した。
内部生と高等学校から入学した生徒の混合クラスで、国公立大進学を希望する生徒のうち、全教科一定の学力(現在は8割以上の得点)が認められた生徒で構成される。ちなみに、現高1のマスタークラスの内訳は、内部生23名、他の中学校から入学した生徒が16名となっている。

特色は5教科8科目のカリキュラムが組まれ、ハイレベルな授業が行われる点にある。土曜講座や夏休み集中講座(9日間と土日を除く連日)にも全員が参加する。全般に生徒の意欲は高く、中学段階ですでに学習習慣が身についている生徒がほとんど。高1マスタークラス担任の高橋邦明教諭は「マスターの生徒には中学時代にバスケットやサッカー、吹奏楽といったクラブ活動にも熱心に取り組み、勉強と両立してきた生徒が多いのです」と、マスター生の自己管理能力の高さに期待する。
高2マスタークラスの昼休みに覗いてみると、机を寄せ合って和気あいあいの雰囲気でお弁当を食べていた。授業についての感想を聞くと「授業進度が速いので、たいへんです」と女子生徒が笑う。担任の井上博之教諭によると「他のクラスより勉強量が多いので、クラブ活動にかける時間を各自で調整するよう指導しています」と。それでも入部率は75%で、運動部に籍を置く生徒もいるという。ただ、「土曜日の授業とクラブの対外試合などの日程が重なる場合は、授業を優先するという約束事があります」と、そこはきっぱり。

国公立受験ではラスト3か月のメンタルケアが重要といわれる。周囲の生徒が私大の合格を次々決めていく中、進学先を早く決めて安心したいという心理に、どうしてもなる。これについては「モチベーションを維持させながら、最後の最後まで粘れるようケアしていきたい」と高橋教諭。ちなみに、国公立進学を謳っているクラスであるため、私立大学への推薦は受けることはできない。背水の陣を敷いて国公立受験に臨むことになる。

最後に高橋教諭に目標を尋ねると、「39名のクラスで、京大、阪大レベルに2ケタの生徒を送り出したいと思っています」という答えが返ってきた。

得意を伸ばし、苦手を克服
じっくり伸ばすコアクラス

 バタビアコース・コアクラスはその名の通り、大谷高等学校の中核をなすクラスで、学業とクラブ活動の両面を充実させたいと考える生徒が多く在籍している。得意科目がある一方で、苦手科目も抱える生徒が少なくないが、習熟度別授業によって、得意科目はより伸ばし、苦手科目をじっくり学べる体制が整えられている。また、進路の多様化に対応するため、幅広い選択科目を履修できることも特色といえる。

高1のコアクラス担任を務める常富慎一教諭は「コアクラスは全体では生徒数は多いですが、習熟度別授業編成を行っているため、クラスによっては27〜28名くらいの少人数制となっている授業も多いです」と、指導する側の目が届きやすい点を強調する。一部40名クラスもあるが、こちらは習熟度が上位のクラスで、生徒の集中度が高いため、速い進度、高い密度の授業が可能となっているという。

常富教諭は数学科担当で、この日は同一クラスで2時間連続授業を終えたところだった。「たしかに数学の授業を続けて受けるのは、しんどいと思いますが、生徒は最後まできちんとノートをとっていましたし、授業の後半部分でも発問にはしっかり答えられていました。生徒像としては基本的に真面目で指導しやすいタイプが多いです」と話した。

バタビアシステムを中学で導入しているせいか、教諭同士の授業参観も抵抗なく行われており、より良い授業を行うための研究意欲が教諭側にもあるようだ。
コアクラスに籍を置き、バスケット部で活躍する男子生徒は、「授業のスピードが速く、予習・復習が欠かせないけれど、バスケット部の練習も充実していて楽しい毎日」という。生徒の中にはマスタークラスに在籍する学力があっても、部活動を思う存分やりたいと希望する者もいて、敢えてコアクラスを選択する生徒もいる。だが、一定水準以上の学力を認められた場合には、高2進学時まで転科クラスが可能となっている。

高大連携で多様な進路
インテグラルコースの魅力

 クラブ活動の加入率80%超、興味関心の幅が広く課外活動などに取り組みながら、志望の進路を実現したい生徒のためのインテグラルコース。進路指導部長を務める田中岳人教諭は、「最近は進路選択の幅が広がっていますが、大学で勉強する分野をしっかりと理解したうえで進学しないと、ドロップアウトしてしまうケースもあると聞きます。そうしたことをなくそうと、本校では高大連携による進学システムを構築してきました」と独自の進学システムについて説明してくれた。

 高大連携システムでは、高校生に理解しやすいように工夫された大学の授業を受講し、その生徒が目指す学問分野と進学しようとしている大学の学部がマッチしているかどうかを体験するというもの。マッチしていれば4〜5回の授業を受けた後、レポートを提出することで、入学が決まるという。

 いわゆる指定校推薦枠とは別に、同校が長年大学との連携の中で構築してきたシステムである。現在、立命館大学(20名)、龍谷大学(8名)、関西大学(10名)、畿央大学(10名)、神戸夙川学院(10名)、大阪産業大学(10名)、帝塚山大学(18名)、大谷大学(48名)、立命館アジア太平洋大学(5名)が確保されている。

 これらはいずれも学部が重複しないように、かつ多様な学部との連携を行っているもので、興味関心の幅が広いインテグラルコースの生徒に適った新たな進学制度といえる。

 たとえば、立命館大学のある学部の授業は、ウェブ配信されたものを同校の視聴覚設備を活用し受講するため、クラブ活動や課外活動で多忙なインテグラルコースの生徒でも負担が少ないというメリットがある。

 田中部長は「女子に多いのが航空関係の職に就きたいという希望です。最近は国公立大学でも和歌山、琉球、高崎、奈良県立などで観光学部が次々に開設されています。連携校の中では、神戸夙川学院に観光文化学部があり、今後人気の学部となりそうです」と話す。

 また、従来からの指定校推薦枠も関関同立、産近甲龍をはじめ多数確保しているため、部活動との両立を図りながら進学を希望する生徒のニーズに応える体制も整えられている。

 取材では協力いただいた先生方のもとへ校内のあちらこちらを移動した。そのあい間に、生徒が屋上テラスで談笑したり、リラックスしてお弁当をほお張ったりする表情を目にすることができた。中学部長の梅垣教諭は「新校舎ができてから、生徒たちに余裕を感じます。生徒の気分が落ち着いていると、こちらも生活指導に割くエネルギーを教科指導に充てることができます」と話してくれたが、その言葉どおりの光景であった。

 「新校舎」という環境の変化は、単にひとつの改革に終わらず、それによって生み出された恵みを次につないでいこうとする機運を感じながら学校を後にした。

 
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