洛南高等学校・附属中学校の校舎は世界遺産・東寺の境内に建つ。
近鉄「東寺」駅から徒歩10分。大宮通りに面する慶賀門をくぐって東寺の境内へ。左手に五重塔を仰ぎ見ながら北大門を抜けると、不意に大きな歓声が聞こえてきた。前方に見えるのは同校の体育館。その地下にあるプールで、水泳大会が開かれていたのだ。この日は高校2年生の大会。全11クラスの生徒がプールサイドの観客席を埋め尽くしている。出場選手はもちろんのこと、応援にまわる生徒たちも一生懸命だ。クラスを代表する選手たちに力一杯の声援を送る。勉学だけでなくクラブ活動や行事にも本気で取り組むのが洛南の伝統。水泳大会で、その一端を垣間見ることができた。
生活即学習、生活即心
男女共学から2年目を迎え、校内には女子生徒の姿が自然にとけ込んでいる。
女子の募集枠は中学・高校ともに募集定員全体の25%に限られ、今年は中学45名、高校45名が入学した。女子の占める割合はまだ小さいが、いずれも狭き門を突破した成績優秀な生徒たち。その存在感は大きい。特に中学では女子の方が元気よく、男子を圧倒しそうな勢いという。
中学入学者は全員同じカリキュラムで学び、高校進学後も内部進学クラスとして、外部の中学から入学してきた生徒とは別クラスを形成する。
高校はT類とV類の2コース制。基本的に両コースとも、国公立大学進学を目標としている。特にV類は、東大・京大など最難関の国公立大学を目指す。
T類・V類とも大学合格実績はめざましく、今年も東大19名、京大98名を初めとして、国公立大学に現役と既卒生を合わせて371名が合格した。また、ここ数年は医学部を目指す生徒が増え、今年は94名が医学部に合格。そのうち半数近くを国公立大学の医学部が占める。
超難関大学に合格した生徒たちが、どのように受験勉強に取り組んだのかが知りたいと、今年の卒業生が書いた「合格体験記」に目を通してみた。すると、どの生徒も「授業に集中する」「規則正しい生活」など、驚くほど基本的なことを大切にしている。京大経済学部に合格したある生徒は、「生活即学習、生活即心」が「受験の真髄」とまで言い切っている。
また、後輩たちに「文化祭や体育祭などの学校行事は精一杯頑張った方がよい」とアドバイスする生徒が多い。学校行事は仲間との絆を深めると同時に、生活の区切りとなるからだ。実際に、難関大学合格を勝ち取った生徒たちは、クラブ活動や学校行事に積極的に参加してきた。毎年9月に開催される体育祭は、高校3年生が中心となって運営する。応援団長を務めるのも3年生だ。「応援団長をやって京大を受けるのは普通のこと」という。
そして3年ないし6年間の学校生活が、「苦しい受験勉強を頑張り抜く精神力を鍛えてくれた」と、多くの生徒が感謝の言葉を記している。
『学校へ行こう!MAX』に登場
今年5月8日、TBS系列の人気番組『学校へ行こう!MAX』に洛南高校が登場した。
「文武両道のエリート校」として、同校の学校生活の様子が紹介されたのだ。
取材は3日間をかけて行われ、アイドルグループ「V6」の坂本君と三宅君が同校を訪れ生徒たちにインタビューした。
番組では、「洛南高校のスゴイところベスト10」と題して、大学進学実績や陸上部・体操部・バスケットボール部などの活躍ぶりがランキング形式で紹介された。
運動部が目立つなかで第8位にランクインしたのが吹奏楽部である。これまで全国大会に14回出場し、金賞や銀賞など優秀な成績を収めている。昨年は、全日本高等学校吹奏楽大会において連盟会長賞を受賞した。
吹奏楽部では毎日、練習が終わると伝統のミーティングが行われる。それは、全員で精神統一することから始まる。目を閉じ、腹式呼吸でテンカウント後に目を開ける。このタイミングが全員、見事に揃う。一糸乱れぬ演奏をするために、何十年と受け継がれてきた方法だという。
続いて、部員一人ひとりが今日の練習について、反省や仲間への感謝を述べるシーンも放映された。
第3位は「名物先生」の英語の授業。同校OBで、人気コミック「ドラゴン桜」に出てくる英語教師のモデルとなった竹岡広信先生である。英語を楽しく勉強するために、授業にビートルズの曲を取り入れたり、単語をただ暗記させるのではなく語源から教えている。
先の合格体験記のなかでも、竹岡先生の著書「ドラゴン・イングリッシュ」(講談社)で英作文を勉強したという生徒が何人もいた。 |
「人間教育」の場
柴垣校長は「クラブの活躍も勉強も生徒のやる気次第。本校は生徒にやる気を出させる学校です」と強く語る。
仏教をベースとした人間教育を重視する同校では、学校生活のあらゆる場面で、けじめの大切さや、感謝して生きることを教え、何事にも全力を尽くす心を育てている。
しかし、心の教育は「口で言うだけでできるものではありません」と柴垣校長。指導者が模範を示し、生徒が実際に体験することで初めて身につく。
例えば先生方は、あるときは厳しい言葉で生徒の慢心を打ち砕く。またあるときは、模試の結果が芳しくなかった生徒に、「気にするな」と声をかけて気持ちを落ち着かせる。
「生徒を導くのは、テクニックではなく教師の人柄。毎日の生活こそが重要です」。
授業だけでなく、クラブ活動や毎月のように催される多彩な行事が人間教育の場となる。まさに学校生活のなかで、「やる気」と強い精神力が培われていく。生徒たちは、それを「洛南魂」と呼び、夢の実現に向けて最後まで全力を尽くす。その結果が、輝かしい大学合格実績や全国レベルのクラブ活動となって表れている。
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