自身を大切に育てることで
他者への思いやりを育てる
山脈の雄大な自然を基盤とした緑豊かな環境の中、瀟洒なマンションや閑静な住宅街が並ぶ、静かな街・箕面。緑の多いこの街の一角にある箕面山麓公園の側に、聖母被昇天学院中学校高等学校はある。通学路は、住宅街の中を駅までつなぐ道なので、大型の車が通ることもなく安全なエリアを確保している。また、母体となる修道院の前を通るため、15分の道のりで生徒に何かあった時には、修道院のシスターたちに助けの手を差し伸べてもらうこともできるのだ。
日本全国的に共学志向が強くなり、多くの男子校・女子校が共学化の波に迎合している現在。キリスト教の教えを基本とし、知性と母性に満ちた女性を育成し続けるために、あえて女子校で在り続けるのだと、入試広報部部長の斎藤直美教諭は語る。
「生徒一人ひとりをその子の持つ資質をそのままに、充分に慈しみ育てることを重視しています。そうやって愛された子は、自らを価値のある大切な人間であると知っています。自分を大切にする術を覚えた子は、他者をもまた大切にできるのです。特に女性は、いつか良い男性と巡り会い、子どもを産んで育てていくかもしれません。そのときに、家族への愛情を惜しみなく注げる女性になるように、学生時代の今、慈しみの心を教えていきたいのです」
斎藤教諭の言葉通り、聖母被昇天学院はどの生徒にも心配りができるよう、教師陣だけでなく、警備員など学校関係者全員が全学年全ての生徒の名前と顔を覚えている。これは大型の学校では到底無理なこと。1学年にわずか60名弱、全6学年を合わせても、310名弱の生徒数である聖母被昇天学院だから可能なことなのだ。
「一人ひとりの生徒は、神から与えられた大切なギフト(賜物)です。貴女は貴女のままで良いのです。それが我々教師陣が、ここに採用されたときに最初に教えられる聖母被昇天学院の教育方針です」
成長著しい女子生徒の6年間をしっかりと見守ることができる聖母被昇天学院は、卒業してからも生徒の心のふるさととなり、自分の姉妹や娘、孫を通わせたいという卒業生が多い。中には、唯一共学である幼稚園の卒業生だという父親からの、娘の入学問い合わせもあるほどだと言う。
生徒の数の3倍を超える
指定校推薦枠
高校では、基本的には中学からの内部進学がほとんど。様々な事情により減ってしまった生徒の数だけを募集する。中学課程から高校の前倒し授業を行うことは少なく、その年度にあった内容を深く理解し、知識を定着させることに重きを置く。特に、定期テスト後には生徒個々の成績資料となる振り返りシートを作成、どういう問題につまずくかをしっかりと把握し、反省と復習の意味で繰り返しテストやプリントを実践。確実な基礎力をつけていくのだ。このため、高校からの入学生が授業に付いていけなくなることは少ない。
高校2年生からは希望進学先に分かれてカリキュラムが進む。国公立・難関私立大学または理系進路を目指すアドバンスコースと、私大文系や短大の推薦進学を基本とするグローバルコースである。アドバンスコースは学年上位20%を原則にしているがあくまでも生徒の希望について十分に話し合い、成績が伸び悩む生徒がアドバンスを希望する際には力を貸し、成績優秀でもグローバルに進みたいと言う生徒には、どこの学校がより将来の夢に近いかをともに考えるという、教員たちの大きな助力が光っている。
グローバルコースは指定校推薦が基本だが、1つや2つの枠を生徒が争うというものではない。これが聖母被昇天学院の大きな特徴なのだ。
「指定校推薦枠は毎年据えており、今年度は卒業生徒数の3倍以上となる200近い枠が全国の私大・短大から寄せられています。中には前年たった一人の卒業生が進学しただけの大学から『翌年、卒業生を入学させて欲しい』と推薦枠をいただいたこともありました」
斎藤教諭の言うように、学ぶ姿勢を持つ、躾のできている生徒が欲しいという多くの私大の望みに、聖母被昇天学院の卒業生が適しているということであろう。
一方、アドバンスコースは設立4年目。昨年、1期生を卒業させたばかりだ。しかし、既に関関同立を始めとする難関私大や医師薬系大学への進学を決めた卒業生が続々と誕生している。これは聖母被昇天学院の環境の良さが生徒を伸ばしているという現れである。 「授業が理解しきれない、またはもっと深く学びたい生徒には、校内の教師が家庭教師のように個々に指導します」
つまり、深夜まで予備校や塾へ通う必要がないために、生徒の体力が温存でき、学生生活をよりはつらつと過ごせる。これは規則正しい生活を望む10代の体をも、充分に考慮した対応である。
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新たな言語と文化に触れる
フランス語選択授業
習熟度別授業となる外国語では、英語以外にフランス語も修得できる。英語が苦手だった生徒が、フランス語に興味を持ち、良い成績を残すことも多い。また、今年よりフランス・ベルギーへの研修旅行が始まっており、姉妹校で10日間学びながらヨーロッパの文化や言語に触れることもできる。
「引率として生徒と一緒に行きましたが、皆いきいきとして活発にあちらの文化や言葉を吸収していました。体制が整えば、多くの生徒を連れていき、創立者の足跡をたどることで被昇天ファミリーの一員たる自覚を確かなものにしていきたいと考えています」
そう語る入試広報部副部長の大林千鶴教諭は、自身も聖母被昇天学院の卒業生。学生時代にフランス語を学んだ一人である。卒業後、もっとフランス後を学びたいと留学する生徒もいるが、指定校推薦枠にあるフランス語フランス文学系に進むこともできる。
こうして育った生徒は約7割が4年制大学進学、他も短大・専門学校・留学などそれぞれの道で学び続けることを希望するため、卒業後即就職という生徒はほぼ0%。卒業生誰もが、さらなる飛躍を望むように成長している。
「光で養われた者だけが光を与えることができる」という創立者の思いは、卒業生・在校生の中に脈々と息づいている。
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