受験システムの変化により
増えた入学希望者数
全県一区制をはじめ、様々な変化を遂げた和歌山県の受験システム。その影響を受け、募集定員を大きく下回る学校もある中、逆に受験数が増大した学校もある。開智中学校・高等学校もその中のひとつだ。
「中学受験者数520名の内、併願者が他校に流れる数を例年から考えて、合格者を319名としました。この内の120名近くが実際の入学生となるという予想を立てていました」。
そう語るのは法人本部長の土井和正先生。ところが、受験期間が終わり、入学手続きを終えた生徒数は何と170名強。予想をはるかに上回る入学者数に、急遽1クラス増設することになったという。
また、高校も公立に対する不安と、少子化が逆に影響し、子ども1人に対する保護者の教育への思いが強くなったのを弾みとして、入学希望者は右肩上がりを続けている。
「中学校6年一貫コースでは、兄弟での入学生も増えています。また、在校生の口コミで入学を希望する生徒が増えているのも事実ですね」。
では、実際にどのようなシステムを採られているのか、具体的に聞かせていただいた。
それぞれの指導の変化に伴い
中高の学校生活を分離
中高一貫コースは6年間を全く独自のシラバスにより導いていくことになる。名称も中学1年生から6年生という呼び方となり、高校より入学する生徒とは全く異なるコースとなる。
一方、高校は国公立大学を目指す進学T類と、難関私立大学を目指す進学U類に入学時から分けられている。進学T類は2年次に文系・理系に更に目標を細分化。進学U類も文理・芸術・体育といった各専攻の中から目標を決め、それに合わせて実力を上げていくといったシステムが採られている。
この2つのコースの生徒は、授業に関してはほぼ接触のない状態が取られている。11,000坪という広大な敷地には、校舎や体育館、職員室といった設備はすべて2つずつ設けられており、登校のための門も2つ、文化祭や体育祭などのメインイベントも別々に行うため、一見、同じ敷地内にある別の学校のような雰囲気だ。
それが互いに良い刺激を生むのだろうか、年々合格実績は増え続けており、15年度の大学合格者637名中、国公立大学合格者は98名(中学校・高等学校合計)。実に32%近くが国公立の大学へ進学していることになる。特に中高一貫の卒業生はレベルが高く、京都大や大阪大、大阪市大医学部といった最難関校への進学を可能にした生徒も多い。
「彼らは決して最初から高い偏差値を持って入学してきたわけではありません。開智への進学を決める生徒は、中学・高校共に平均偏差値が50前後といった、中レベルの成績の生徒がほとんどです。入学後、公立とは比較にならないほどの授業時間数と補習を軸に、一人ひとりに対しきめ細やかに指導することで、全体のレベルアップに成功しています」。 土井先生の語る授業時間は、年間で1386時間。公立校が設定している平均980時間に対し、何と400時間も多い。水曜日を除く週4日間は7時限目に補習もスケジュールに組み込まれており、通常授業だけでは理解できない生徒にも万全のフォロー体制が採られているのである。
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教員の徹底研修と
生徒への厳しい生活指導 これらの授業時間の多さを見て、クラブ活動はできないのではないかと危惧する声も少なくない。しかし、水曜や土曜にはクラブへの時間が大きく割かれており、試合前には早朝に登校し、練習する姿も見られる。実際、時間が短いだけに集中して活動できるのか、県内の大会や様々なイベントにおいて、好成績を上げているクラブも少なくない。
土曜にはクラブのほかに、スーパーサタデーと称した体験学習のプログラムも組まれている。校外へ飛び出し、大自然の中で行われる合宿では、坐禅や蕎麦打ち体験、林業体験といった、豊富なメニューが用意されており、日頃授業でしか習うことのないものに実際に触れ、経験することで、精神面での成長を図るのが目的である。また、文化祭や体育祭などの通常イベントや、模試なども、土曜に行われ、これらの特別なイベントが通常授業に差し障りを与えることのないよう、十分な配慮がされている。また、校舎の改築工事は現在も行われており、近年、IT技術を結集した施設を建設し、より新しい情報技術教育が通常授業や体験授業の中で行われる予定である。
これらのイベントや授業で生徒を指導する教員は、平均年齢が約33歳という若さである。これは70年間続いた私立女子校を進学校に切り替えるのと同時に、国公立を目指す進学校に必要な実力を持った若い教員の補充が行われたのが大きな原因の一つといえる。その後、教員の徹底的な研修を行い、教員全体の指導力のレベルアップと共に意識改革を行って、生徒の目標達成に十分な手助けができる能力を養った。そのため教員は皆、自分自身に対しても厳しい目を持っており、生徒が帰宅した後も授業や様々な指導に必要な下準備に深夜遅くまで残業することを厭わない人材が多いという。
教員に厳しいという学校であるからには、もちろん生徒への生活指導も徹底している。喫煙・飲酒などに対する厳重処分はもちろんのこと、染髪は全面禁止。携帯電話は見つけ次第契約をうち切らせ、処分してしまうという。
「ほかにも多くの生活面での指導要項を実践しています。しかし、厳しい指導を続けることで、生徒の生活の乱れがなくなり、逆に生徒が明るく、活気が出てきたと感じています。また、保護者からも面倒見の良い学校として非常に好評を得ています」。
現在では、和歌山県内だけでなく大阪からの通学生も多くなっているという。それは、大阪の中央、天王寺からのJRの快速が停車するために通学がし易くなったというだけではない。それだけ遠くからでも通いたいと思わせる魅力が、開智の指導方法には十分に詰まっているからだろう。
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