深い信頼関係が築かれる場
寮生活で育まれる感謝と自立
大自然に囲まれた瑞浪高原中腹に、こころの教育を目指す全寮制高校として昭和35年に創立された麗澤瑞浪高等学校。昭和60年には中学校開校、そして平成8年からは通学生の受け入れを開始するなど、時代と要望に合わせて発展を遂げてきた。
現在、中学校200人、高校500人の全校生徒の6割が寮生であり、東北地方から沖縄、さらに海外からも生徒たちが集まっている。この寮生活ではチューターと呼ばれる寮担当教員が配置され、生徒の生活面の世話と人間的成長を促している。チューターと担任、クラブ活動担当者が常に連絡を取り合って、各生徒の現状を共有、学校職員全員が生徒を見守る校風に、生徒たちの大人への信頼が深まる。
家族と離れて暮らすという環境の中、生活面において、自分のことは自分で行うため、自立心がつく一方、これまで自分を育ててくれた家族や両親に対する感謝の気持ちが育まれる。また、多くの人々と生活をともにすることにより、リーダーシップやときには譲り合うことなどの学びが日常の中で行われる。
寮生は成績優秀なだけではなく、優れた人間性で評価が高いので、地元でもあえて入寮させる保護者もいるという。通学生もそんな寮生たちに感化され、学校全体が落ち着いた雰囲気だ。
また、育ち盛りの子どもたちの食育に配慮し、専属の栄養士が子どもたちに合わせたメニューを作成、校内大食堂の厨房で調理スタッフが手作りして提供する。卒業式にはここで、卒業生と保護者、学校スタッフたちで、すきやき会食をするのが開校当時からの伝統だ。
「勉強だけでなく、こころを育てるのが教育であり、品性と人格が一番大事。そう考える保護者の方々が麗澤を選んでくれるようです。今後、ますますグローバル社会になっていきますが、その中で世界に出ても通用する人材、コミュニケーション能力の高い人材を育てていきたい。それには『自立、感謝、思いやり』の理念がベースになります。社会に出ると人間関係は必須ですし、それは思いやりがないと築けない。その三本柱は常に伝えていきます」と蟹井校長は話す。
きめ細やかな学習指導と
インターハイ常連の部活動
学校が週5日制となっても、変わらず土曜日の4時間授業を続けてきた本校。高校はコース制ではなく、選抜クラス、進学クラスのみ。それぞれの学力や適性に合わせて、豊富な選択科目からカリキュラムを組むことが可能だ。月・木曜の放課後は受験対策用の「進学講座」や自習に充てられ、本校の勉強のみで難関大学を突破できる学力をつけている。中学では、今年から高校にならい、月曜日の放課後に各教科担当者が学問の面白さを実感できる「プレミアム講座」を開講した。これらの授業外講座は、本校の教師のみで対応。教師たちがいかに自己研鑽に余念がないかが実感できる。また、東大・京大見学ツアーも開催しているという。
図書館と自習室を兼ね備えた自学センターは、生徒たちの第2の教室だ。早朝から夜まで休日も休むことなく開放され、多くの生徒たちが自学に励んでいる。
文武両道を誇る本校では、中1から高2までは必ず部活動に参加。男女剣道部と男子テニス部はインターハイ常連、今年は弓道部もインターハイ予選で優勝するなど、部活動も盛んだ。
「さまざまなことを頑張った結果としての難関大合格であり、インターハイ出場。何事にも本当によく頑張る自慢の生徒たちです」
700人の生徒に対し教師は70人、非常勤教師は21人、事務や食堂スタッフ46人という人数の多さ。深さを変えることのできるハイテクな屋内プール、3つずつあるグラウンド・体育館などが四季折々の大自然を感じられる88万坪の敷地に広がる。 |
絆を大切にする環境で、
生徒を育て、教師を育てる
教師は生徒の心に火をつけるような授業をしないと、生徒たちのモチベーションも上がらない。そのため本校では、教員も常にスキルアップを目指し、授業力向上のための校外研修に出かけている。初期には自主参加者を募っていたが、現在は予算化し、毎年延べ20〜30人の教師を長期休暇ごとに参加させているという。
「先生たちを育てることも大切な仕事。モチベーション維持、スキルアップの提案はもちろん、たまには飲み会で相談に乗ったりすることも大事ですね。もちろん、自分自身も成長していかなくてはなりません」
先日、教員室に校長推薦図書コーナーを作ったという。指導にあたって参考になる知識や学びを提供する本を選んで、書棚に並べている。教員はほとんど入れ替わることがないため、腹を据えて教育できるのも本校の良さだ。
「校長として“知徳一体”の教えをメインに、寮運営、学業と部活動の充実、そしてそれを率いる教員の教育に力を入れたい。また、生徒数を700人から800人へと増やしていくのも目標です。麗澤の教育を日本中に広めていきたいですね」
来客玄関の壁には、第一期からの卒業アルバムの写真が貼られ、本校舎一角の石版にも第一期から入学者の名前が刻まれている。生徒たちとの深い絆の中、まさに一人ひとりを大切にする教育を、半世紀以上実践し続けてきた学校である。
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