JR静岡駅からのどかな駿府城跡の外壕に沿って15〜20分ほど歩いて行くと、静岡雙葉学園がある。バスに乗らず、徒歩通学するのが同校の伝統だ。
今の子どもたちは、我慢が苦手だと言われていることから、歩くことでがんばる心も育つと考えられている。もちろん教師も歩いている。
350年前から受け継がれるカトリック教育
2003年静岡雙葉学園は、創立100周年を迎えた。数年前より2018年の完成に向けて大規模な改装工事が行われ、2001年末には、新聖堂が完成。聖堂はいわゆる礼拝堂であり、同校にとっては教育の中心となる存在。市の中心部に位置し、土地にゆとりのない中でも200名は収容できる広さが確保され、現代感覚を採り入れて設計された。ここは生徒たちが喧騒を離れ、神と語り、内面をみつめる場所になっている。楽しい色調の生徒ホールは放課後、生徒が勉強したり、友人と語り合ったりするのにも使われている。小さなゴミひとつでも出すことにとまどいを覚えるくらい大切に考えているようだ。
創立者はフランスのニコラ・バレ神父。約350年前貧しい子どもたちが人としてふさわしく生きられるようにと小さな学校を作ったことが始まりで、世界各地に広まった。その理念は時代が変わっても、教育目標として受け継がれている。
人は神によって作られたものであり、生きるということは、自分に与えられた能力を開花させ、それをもって人間共同体に奉仕すること。教育とは、生徒一人ひとりに与えられた能力を引き出し、結実することを助けることだと考えている。
また、校章にフランス語で記されている「徳においては純真に、義務においては堅実に」という言葉は校訓として学習・行事・クラブなどのすべての活動の礎になっている。「真直ぐで純真な心を養い、なすべきことは誠実に勇気を持って最後まで行う」という意味で、毎日の生活を通して責任感や忍耐力のある生徒に育つ基盤となっている。 静岡雙葉学園ならではの中高一貫教育
高等学校での外部募集はなく、中高一貫6年の教育を実践しているのも静岡雙葉学園の大きな特長だ。中学1年生から高校3年生までが同じ建物の中で学び、行事もともに行う。先輩と触れ合うことで刺激を受け、心の成長にも生かされている。
6年間は、キリスト教精神を学びつつ自分に与えられた能力を探り、伸ばし、歩んで行く時間。能力を開発しようと進路指導は早くから行われるが、特に卒業生を招いての講演は好評だ。昨年は青年海外協力隊員としてヴァヌアツ共和国で小学校教育に携わる先輩が招かれ、生徒たちは大きな感銘を受けた。
進路は能力を開花させ成長するために選ぶもの。すなわち、有名大学に入学することをゴールと考え、指導するようなことはない。
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国公立、有名私立大学への高い進学率
進学立100%の同校では高校2年次より文系1・2、理系1・2の4コースに分かれ、進路に応じた学習が行われる。90%は現役合格、国公立大は毎年40〜50名難関私大へ進学する者も非常に多い。また特に国公立大学では医学部、薬学部、工学部など理系の進学者が半数近くを占める。
難関大学を目標とせず、東大に行ける実力があっても希望進路に近い私立大学に行く生徒もいる。また、一度文系で入学しても、医師への希望が芽生えれば受験し直して、医学部へ進んだ卒業生もいるという。
3年連続全国優勝の「競技かるた部」
部活動は25部あり、興味や才能に合わせて選ぶことができる。部によっては県大会などで活躍する実力を持つ。特に「競技かるた部」は社会人や大学生、高校生が出場するものも含めて主要な3つの大会をすべて制覇。それも3年連続だ。
静岡雙葉の生徒は、フェアプレーで堂々と闘うので対戦相手は威圧感を感じるらしいとも。勝ち負けだけでなく、その時々の緊張感と技術の対決を楽しんでやっているようだ。バレー部の試合でも、負けていても落ち込んだりしないので、その姿が相手チームの動揺を誘い、逆転したこともあるとか。
なお、2002年の学習指導要領の改訂で「総合的学習の時間」が設定されたが、同校では部活動との連携も含めて「探究活動」とし、10の分野を基本に各自がテーマを設定して週に1時間を当て、研究を深めることにしている。
「探究活動」を通して『自ら学ぶ力』のさらなる醸成を図りたいとしている。
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