自己変革と挑戦する心を
生徒も教員も共に育てる
大学の合格実績や企業の採用実績以上に、地域社会から求められていることがあると渡邉一洋校長は語る。10年、20年先を見据えた視野の広いグローバル人材の育成。その実績こそ地元企業人から小・中学生にまで「星陵はワンランク上の夢、未来を切り拓く力が身につく学校」として厚く信頼されるゆえんだ。
最近、渡邉校長の眼に映るのは、「生徒があらゆる活動の場面で動じなくなった。外国人や大学の先生が相手でも物おじせず、堂々とプレゼンテーションできる」姿だ。その自信、頼もしさは何から生まれるのか。渡邉校長の答えは明快だ。「本物に触れる経験。それに勝るものはない」。
「本物」と「その先の未来」を見せる星陵の教育プログラム。今、支柱となっているのは、海外提携校8校と織りなすグローバルな学園環境だ。1年中、提携校からの留学生が在校し、年間80人ほどの星陵生が研修や留学で渡航する。英語力も意識も高い生徒ばかりかと思いきや、「挑戦するのは英語が苦手な子や自分を変えたい子も少なくありません」と入試広報課長の佐野北斗先生は語る。「おとなしかった子が、現地でみるみる積極的に変わり、生き生きと英語で会話する例がいくつも報告されています」。
単なる語学研修ではないのは、ユネスコスクールとして探究学習・異文化調査・プレゼンテーションなどをプログラムに盛り込むからだ。業者任せではなく、星陵と現地校の教員が親交を深めてプログラムを共創する。今春の卒業式で渡邉校長は英語で卒業生にエールを送った。
「Challenge yourself and aim to be the leaders of the new world.」
グローバル社会で生きる流儀を教員自ら体現する、それが星陵の教員力といえよう。
星陵サイクルで立体的に
未来に連結する「学び」へ
生徒自らが「行動・思考・実践」のサイクルを回す「星陵サイクル」。英語力向上へカリキュラム改革も始まった。朝の英語テストを導入、授業でもICT機器を活用して英語4技能を鍛えあげる。
「大学時代の長期留学に必要なTOEFLスコア獲得に、高校として応えていかねばなりません。でも」と渡邉校長は語気を強める。「『英語ができる』人材の育成がゴールではない。グローバル社会で積極的・主体的に活躍するために必要なツールの一つとしての英語である、と本校は考えています」。
「英語力はグローバルスキルです」と佐野先生。「カナダ研修でも、現地の人が食べる魚を釣る川を視察し、富士川と比べて水質や生態系はどうか、と問います。身近なところから生徒の思考力を育てる。そして英語でプレゼンさせる。ローカルとグローバルを関連させながら、地元を再評価したり、世界について意識を高めたり、など、各々の進路設計(実践)につながっていきます」。
時代を見据えた星陵の授業改革は、英語だけにとどまらない。国語では記述式の答案をiPadで生徒が共有して活発な議論の材料に。体育や理科でもさまざまなかたちで活用されている。
こうした動きについて、渡邉校長は、「アクティブ・ラーニングやICT活用は使いどころが肝心」と言う。「今は『解無き時代』。求められているのは『想像力』と『創造力』。『もし自分だったら』と考え、他人の意見を傾聴し、自分の意見をまとめ、伝え合う。そうしたグローバルスキルが養われる仕掛けが必須です。『日本人』としてグローバル時代を生き抜くことができる人材を育てたいと思っています」。
星陵には、生徒を伸ばす
知のフィールドが存在する
昨年6月の「出張講義」(高2対象)では14大学27名の大学教授と専門学校講師など4名が登壇、特別講義が行われた。講演者は星陵生を「受け身でなく、疑問を追究していく姿勢がある」と評価。
「優秀な生徒だけを入学させているわけではない。入ってくるのはごく普通の子たち。ただ入学後の『伸び率』には出身中学の先生方も驚きます」と佐野先生。
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学校見学会は地元の中学生の半数近くが参加する人気ぶり。佐野先生は「生徒の多様な希望に応える本校のきめ細かな学科・コース制が評価されたのでは」と分析する。
同校の「英数科」は国公立大学・難関私立大学進学を目指す総合コース、得意科目を伸ばして難関大学合格を実現する英数コースを擁し、地元の進学希望者の求めに応えている。「普通科」は有名私大進学を目指す進学コース、法人内専門学校への進学を目指す高・専一貫コース、地元優良企業への就職を目指す普通コースの3コース制。進学校とのイメージが強い同校だが、普通コースの就職率は毎年100%と就職指導でも圧倒的な進路保証力を見せる。さらにすべてのコースの生徒を対象とした「高・大連携プログラム」を運用。就職率県内トップの静岡理工科大学と提携し、高校在学中から同大の講義を受講でき、入試免除での進学が可能となっている。
「進路保証力がある」との絶大な外部評価に加え、中学生は「自分の可能性が広がる、楽しい、伸びる学校」というイメージで捉えているようだ。
「伸びるスイッチは『楽しい』と思ったときに入る」と渡邉校長。「本物に感動し、本気で取り組むから面白さがわかる。『最高の18歳』を作りたいわけではない。私たちがこだわる『結果』とは、18歳のその先です。20代、30代になって、世界を舞台に活躍できる人材の創成です。解無き時代のただなかで変化に対応してずっと生き延びることができる、そして周囲を導いていくことのできる人間を育てることです」。
入学後に多くの生徒が実感するのが「予想以上に先生が熱心」。佐野先生は「僕ら結構しつこいので、できるまで生徒たちをつかまえて育てます」と笑う。
職員室前が生徒と先生でいつも賑わう ―― そここそが星陵が創る「知のフィールド」の活力源となる場所だ。
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