5年制の高等教育機関
大学と同レベルの専門知識・技術を
身に付ける
工業高等専門学校は、高校や大学と比べると数が少ないため、工業高等学校と混同されることがある。工業高等学校は、中学校卒業後に進学する3年制の高等学校のうち、工業系に特化した教育を実施する学校である。一方、工業高等専門学校は、中学校卒業後に進学する5年制の高等教育機関で、大学の学部卒程度の教育を行うことを目的に設置されており、最終学年には卒業研究がカリキュラム化されている。高等専門学校の本科5年卒業後の「大学進学」とは、原則として4年制大学の3年次に編入学すること。また、本科5年卒業後、(準学士)の称号を取得でき、さらに高専の専攻科(2年制)を修了すれば、学位(学士)の取得が可能になる。
近大高専では、1学科複数コース制を採用。
「入学生全員が『総合システム工学科』に入学し、3年進級時に4つの専門コースに分かれます。各コースは、機械システムコース、電気電子コース、制御情報コース、都市環境コース(土木系・建築系)。初めの2年間で数学や英語などの共通科目に加え、すべての専門コースの基礎を学び、ゆっくりと専門コースを選択できるようになっています」と総合システム工学科機械システムコース教授、村田圭治校長は語る。
4コースに共通するのは、指導する教員の多くが、実際に最先端のものづくりを行ってきた一流企業や研究所出身者であり、博士号や修士号、技術士を持つ教授や准教授であることだ。1年次より実践的・専門的な教育を受けることができ、5年間で、大学の工学部と同レベルの専門知識や技術を身に付けられるのが最大の強みである。
5年間の学校生活の後は、就職、大学編入学、本校専攻科進学という選択肢がある。
就職、進学に圧倒的強さを発揮
高専ならではの魅力
高専の特徴は、何と言ってもその就職率の高さにある。実学重視なため、企業側からの評価は一貫して高い。しかも、全国の高専卒業生は毎年約1万人、同年代の約120万人のうちの1%と希少であるため、就職においては非常に有利なのである。近大高専の平成28年度実績は、求人倍率15倍、就職率100%。毎年7割の学生が有名企業に就職する。就職の有利さでは大学と比べても大きく自慢できる点である。
進学においても、国立大学に編入学する学生も多く、進学校に勝るとも劣らない実績を誇る。28年度進学実績は、国立大学22名、近畿大学10名、専攻科7名、立命館大学2名、その他の私立大学4名。基本、浪人する学生はいない。高専生に向けた大学編入学の門戸は広く、工業系学部のある国立大はほとんどすべて高専からの編入を受け入れている。旧帝大クラスの難関国立大学の場合は、筆記試験があるが、国立大学の中には、推薦受験で面接試験だけのところも多い。
本校の場合、近畿大学理工学部や建築学部に推薦枠があるのも特徴だ。
「地方の国立大学に進学した場合の保護者からの仕送り費用等と、通学圏内の近畿大学へ進学した場合にかかる費用は同程度。近大の推薦枠を生かす方法も大変有利だと思います」と総合システム工学科 電気電子コース 進路指導主事の中西弘一准教授は言う。
難関国立大学進学に向けては、平成25年に特別進学コースを開設。1年次から英語や数学は習熟度別に授業が行われ、放課後に特別補講、長期休みには学習合宿を実施。来年の特別進学コース1期生の進学実績に期待が集まっている。
「理系女子」の活躍ぶりに注目
多彩なイベントを開催
企業からの評価は高いが、大学に比べ、社会での認知度は必ずしも高いとは言えないため、高専ならではのさまざまなイベントが行われている。
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「本年度の学校説明会および見学会、相談会は7月29日を皮切りに、11月、12月、2月に開催。オープンキャンパスは8月から12月まで毎月行います。高専ならではのロボコン、エコランカー、ソーラーカー、デザコン、プログラムコンテストなどに向けたクラブ活動の取り組みにも触れる良い機会です。9月には学習塾の先生を対象にした説明会も行います」と総合システム工学科 電気電子コース 入試主事の山川昌文教授。
例年、好評を得ている「理系女子フォーラムみえ」も8月29日に開催予定である。高専や大学で電気、電子、情報、建設、機械、生物、化学などの理系分野を学ぶ、いわゆる「理系女子」の日頃の取り組みを紹介。将来を考える中・高生に、理系分野に興味を持ってもらうことが目的である。12月23日には、近畿大学の施設『11月ホール』で「高専女子フォーラムin関西」も催され、近大高専の魅力に触れる機会が目白押しである。
地域連携を実践し、地域創生に貢献
高専のポテンシャルに期待
文部科学省が推進しているCOC(Center of Community)は、地(知)の拠点大学による地方創生推進事業。 近大高専は名張・伊賀地域におけるCOCとして産学連携を活性化させている。
例えば、地域企業との共同研究・受託研究・技術相談、資格取得のための講習会の開催、小・中学生を対象にした「科学の不思議研究室」の開講など取り組みを強化している。
近大高専が誕生したのは今から半世紀以上前の、日本中が高度経済成長期に沸いている時期。まさに、日本の発展とともに歩みを進めてきたと言っても過言ではない。
「純粋にものづくりをやりたい」、「高専ロボコンにあこがれて」、「野球・サッカー・陸上・テニスなどクラブ活動をやりたい」「大学進学を目指したい」など幅広い入学の目的を受け入れ、個性を尊重した進路を実現できるのが、近大高専ならではの教育だ。好奇心の先に広がるテクノロジーの未来を担う技術者が、今年もまた巣立っていく。
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