6月
●夏期講習の集客
本稿を記しているのは3月半ばで、全国の学校の99%が臨時休校中、大手学習塾の80%が臨時休業中という新型コロナウイルス騒ぎの真っ最中である。本誌が刊行される5月までには騒ぎが収束していることを期待したいが、WHOがパンデミックを宣言し、オリンピック延期論も飛び出してきた現時点では、誰にも先行きは予測できそうもない。
とはいえ、われわれ塾業界に限ってみれば、極めてはっきりしていることがある。すなわち、新年度の新入塾生が大幅に減少し、例年より著しく少ない塾生数のまま夏期講習の募集の時期を迎えざるを得ないということである。
そうでなくともこの春の募集は危惧されていた。経産省「特定サービス産業動態統計調査」から算出した、ここ3年間の中堅・大手塾の教場当たり受講生数のグラフをご覧願いたい。グラフでは割愛した部分もあるが4月から11月まで前年度とほぼ同様、月によっては前年度を上回っていた2019年度の受講生数が12月には失速し、1月にはかなり落ち込んでいる。理由はともかくとして、「市場」はすでに弱含みの局面に入っていた。加えてこのコロナ騒ぎである。例年よりはるかに厳しいことは間違いあるまい。
では、どうすればよいのか。例年以上に折込チラシ、ポスティング、校門配布、ホームページ・ブログ・SNSの更新・投稿の頻度増加等々、有料無料の広告宣伝に力を入れるべきは当然であろう。塾生の成績向上に尽力すべきも言うまでもない。が、ここでは併せて塾生の保護者のクチコミ創出にも注力するようお勧めしておきたい。
こんな数字がある。
◇友人紹介 36・4%
◇建物看板 19・4%
◇折込チラシ16・8%
◇兄弟姉妹 16・0%
◇ネット記事10・7%
潟Cード(東京都)が17年秋に行った「現時点で通塾している小4〜高3生の保護者」対象の調査の結果で、「塾を知ったきっかけ」を尋ねている。友人紹介と兄弟姉妹を合わせると52・4%。クチコミが半数以上を占めている。
具体策としてはやはり保護者との2者面談がベストだろう。難しいようならメールや電話での保護者連絡という手段もある。そこではなによりも子どもを「褒める」ことである。どんな子どもにも長所はある。そうした長所を見つけて褒めてくれる塾教師に対して、保護者はどういう感情を抱くか。自分の子どもの「よき理解者」であり、家族同様の「味方」だと感じてくれるに違いない。保護者にとってはこうした先生こそ、知識あふれる教師や教え方の上手な教師にはるかに優る「先生」であろう。
そんな先生のいる塾を悪く言うわけがあるまい。必ず「あそこはいい塾だ」と言いふらしてくれる。迂遠な方法にみえるかもしれないが、これが塾に対する好意的なクチコミを生み出す最良の手段だと私は思っている。
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