学校散策 掲載:塾ジャーナル2021年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

3女子大・GMARCH以上の現役合格者率82.3%!
自ら学び、ともに考え、未来を切り拓く
EQ型グローバルリーダーに

東京純心女子中学校・高等学校

GMARCH以上の大学合格率3年連続40%台と躍進を続ける東京純心女子中学校・高等学校は今年、ミッション・ステートメントを発表。そのうち3つのミッション「英語の純心」「思考力の純心」「思いやりの純心」が、多様性に満ちた集団の中でいかに醸成されていくのか。困難に満ちた時代において「世界の平和に貢献する次世代型リーダーを育てる」ことを使命とする学校が挑む大胆な改革、そして生徒たちが起こしている驚異的な進化が見逃せない。


いついかなる時も
炬火(ともし)となる人に

コロナ禍でも純心生は純心生だった。入試広報部長・髙橋正先生が休校期間中の生徒の様子を語る。
「授業の動画配信やプリント教材を元に、家庭学習の時間割を生徒自ら組み立てていました。純心には20年かけて精錬してきた技の結晶『学び方』の授業があります。探究学習の取り組みなどから、在校生には学び方の構築が習慣化している。単調な生活のなか散歩に出るなど一日をより良く過ごす工夫をして、自分に合った生活スタイルを粘り強く試していたようです」

また多くの保護者が「家の仕事を積極的に手伝ってくれた」と感激していたとのこと。「一番幸福な人というのは人様に喜んでいただける人」と唱えた創立者シスター江角ヤスのDNAは生徒の中に確かに息づいている。松下みどり校長はじめ教職員たちは、どんな状況でも純心生らしさを発揮する生徒たちに、未来を照らす光を見出したようだ。
「自分で考える時間があるほど、やりがいのあること、それを実現する方法を見つけてチャレンジができる。それは新しい学校の形を創るかもしれません」

生徒たちがオンライン朝礼の度に呟いていたのは「学校に行きたい、早く友達に会いたい」。6月、時差通学で授業が再開、新しい日常が始まると「周りを見て、他者に寄り添い、自分がすべきことを判断する」純心生らしい心配りが、至る場面で見られたという。

混沌の時代だからこそ
確かな学力と英語力を

今春の大学進学実績はGMARCH以上の現役合格者率は44.3%と3年連続40%台。津田塾大・東京女子大・日本女子大の3女子大の合格者29名。津田塾大においては同校初の2ケタ合格12名を達成した。
「津田塾大の入試問題は国公立大の二次試験に似た形式。記述解答が多く、読解力・論理的思考を要します。英語の力とともに、純心オリジナルの探究型学習で磨かれた資料分析の精度や、自分の言葉で表現する訓練を継続してきた成果だと思います」

高校入試では、高い志を持って「叡智探究特進プログラム」に挑戦する受験生が増えてきた。東京純心大学の看護学科・こども文化学科との高大連携が充実している「叡智探究セレクトデザイン」の人気も根強い。中学・高校ともに「純心が第一志望」とする生徒が多数集まってくれた、と髙橋先生の顔がほころぶ。中学入試では、教科の学習に持続力を発揮する「私立型」、知識を結びつける横断型思考が得意な「適性検査型」、経験を積み上げながら思考する「タラント発見・発掘型」の3つの入試枠を設定。教科試験で測るのは、ミッション・ステートメントにも掲げる「論理的思考力」だ。

「まず見たいのは文章を読む際に論理を追って理解する読解力、論理通りにまとめる表現力です。それは純心オリジナルの探究型学習、ひいては大学入学共通テストや国公立大二次試験にも繋がります。先が見えない時代でも必要とされる存在になるためには、自分の中身を充実させなければいけない。学校である以上その充実感の一つは『学力』です」

ミッション・ステートメントでは「世界で通用する実践的英語力を身につける」を掲げる。習熟度別最上位の高校英語Sクラスに、英検準1級の面接対策の授業を導入。ネイティブ教員と、社会性の高いテーマについて対話する授業を年間通して行い、「英語の回路」を構築する。特進の新高3生は全員英検2級を取得、3名が準1級も取得。GTECの「リスニング」「スピーキング」分野で準1級レベル(CEFRのB2)の評価を得ている。

良き方へ人を引き上げる
EQ型リーダーシップ

河合塾模試では、特進・セレクトの隔てなく各教科の成績上位層に純心生が名を連ねる。互いに優れた面を素直に『すごいね!』と認め合う環境が相乗効果を生み、成績を向上させている、と髙橋先生は分析する。
「クラブ活動での先輩後輩の関係性や、卒業生の活躍を見ていると、トップダウンで一斉に動くより、周りの状況や気持ちを汲みつつ、良いところを引き出して一つのことを創り上げる貢献の仕方をする子たちが非常に多い。この『EQ型リーダーシップ』(Emotional Intelligence Quotient)の養成が『思いやりの純心』の指針です」

中学入試の3つの枠の入学生と高校入学の生徒で形成する「多様性のある高校生集団」、その先駆けとなる新高3は、積極性と行動力では突出した存在だという。長崎研修旅行(高2)はじめ、コロナ禍で活躍する機会・行事を尽く奪われた彼女たちだが、「何かやり遂げた実感がほしい。私たちに時間をください」と先生に直談判。松下校長から「丸1日」プレゼントされると、大喜びで「クラス対抗お楽しみ会」を企画、実現させた。「最弱王は誰だ?! ババ抜き対決」「脱出ゲーム」「長崎平和クイズ」など、創作ゲームに先生たちも巻き込み、メイン会場と各会場を画面中継で結び、校舎内外を駆け巡った。「大盛り上がりの一日でした」と髙橋先生も笑みがこぼれる。

「私たちも非常に楽しみましたし、生徒たちも皆とても喜んでいました。多様な力を持つ集団だからこそ実現した好企画。誰一人取り残すことなく『一緒に楽しもう!』と巻き込む力があり、非常によく周りを見ていると感心しました」
人それぞれの居場所を創り、自分だけでなく周りの人も笑顔にできる――そんな場を創造できる人こそ、世界の平和に貢献できる人に違いない。

東京純心女子中学校・高等学校    https://www.t-junshin.ac.jp/jhs/