学校散策 掲載:塾ジャーナル2021年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

「解なき時代」を生きる思考力と行動力、変化を味方に、
学び続けられる人間を創る「新しい学力」が夢と未来を切り拓く

学校法人静岡理工科大学
星陵中学校・高等学校

「星陵には自分が勉強したいと思える環境が整っている」今春の卒業生総代を務めた中高一貫コース5期生の言葉だ。「解なき時代」に物事の本質を見極める力を育てるGSTEAM教育、SDGsをテーマに展開されるPBLなど、多様な学びの場が星陵にはある。最先端のICT環境を備え、生徒・保護者から絶大な支持を受ける授業と、探究学習の協働を通して育成するのは、21世紀型の「新しい学力」だ。教員と生徒がともに築いてきた10年間の軌跡の先に見えるのは、どんな未来だろうか。


多様性、個性を尊重する
「新しい学力」を育む学校へ

2011年開校以来、定員を超える志願者を集め続ける星陵中学校。2科型(国算)・4科型(国算にくわえ理社英から2科選択)・創造力型、と多様な入試枠を設置する背景を渡邉一洋校長はこう語る。
「学びの多様化です。子どもが特性や個性を生かして、学校を選べる時代です」

4科型の受験生の半数近くが英語を選択。学校外でも英語を学ぶ子どもが多いことをふまえ、入試問題もリスニングも含め英検4〜3級レベルで作問されている。創造力型では、分析力・発想力・創造力・表現力を測る。面接も学科型の2倍の時間をかける。
「志望理由はもちろん、自分の経験と向き合って、考える時間をどれだけ過ごしてきたか。大人と、論理的かつ根拠のある会話ができるかどうかを見ます。創造力型での入学生は、探究学習や作文での表現力が明らかに優秀です」
そう語るのは橋本正中学校教頭。大学入試改革にも掲げられる「いま求められる学力」を見据える。

「学校推薦型選抜・総合型選抜は、新しい学力を測る試験だと思います。必須なのは自分の探究学習の成果について大学教授と対等に会話できる力。一般入試も突破できる学力に加えて『新しい学力』も育てられる学校こそ求められていると思います」
卒業生総代の鈴木虎大朗くんは中高一貫コース5期生。今春、京都大学工学部に進学する。中学から「星陵ラボ」で金属サビの研究に没頭する一方、試験前には同級生に日本史の講義を行い、文化祭では古典文学をテーマに謎解き型アトラクションを企画運営した。文系理系の枠を超えた生徒、と渡邉校長。
「自分の好きなことや研究を通じて社会に役立ちたいと願い、実際に行動できる。本校が育てたい生徒の一つの理想像です」

勉強の楽しさに目覚める
1年生、驚異の学力急上昇!

昨年3月、星陵は静岡県内でも極めて早くオンライン学習体制に切り替えた。平時から生徒はClassiやロイロノートなどを駆使し、ZoomやGoogle Meet等も素早く対応できたと橋本教頭。課題提出、オンライン授業への参加率ともに良好、休校期間中ほぼ計画通りに学習が進んだという。生徒・教員ともにICTスキルが飛躍的に上がり、既に高い評価を得ている対面授業とのハイブリッド授業が目指すところだ。

星陵中はこれまで10年間、入学1年目に平均偏差値が10ポイント上昇する驚異的な成長カーブを描き続けている。(「学力推移調査」による)。中1から中3にかけて学習到達ゾーンSランク(最難関・難関大レベル)の生徒数は約1・5倍に。

「入学して『勉強って楽しい!』ゾーンに入った子は、1年目に飛躍的な成長を遂げます。学校の平均偏差値はそう簡単に変わるものではない。『10ポイント上昇』は、生活や学習の仕方など細かい指導を素直に受け入れ、頑張った生徒がいかに多いか、という証です」
橋本教頭は、大学入試における総合型選抜・学校推薦型選抜の割合が5割に迫る状況についても「時代の潮流を見れば当然、予測できたこと」と言い切る。
「最難関大学は二次試験のウエイトの方が遥かに高い。星陵生は一般選抜でも結果を出せますし、一方で総合型選抜での合格者も確実に増えつつある。日々の授業で培われる力、美育プログラムや探究学習で育まれる力の結晶といえるでしょう」

卒業生の鈴木くんも、こう振り返る。
「自分の実力に大学を合わせるよりも、大学に自分を合わせた勉強をするべき。『美育』行事では多くのジャンルから多角的に学び、考える力が身につきました」

地域にインパクトを与える
「美育」とSDGs探究学習

「美育プログラム」は、科学・文化の本物に触れて物事の本質を見極める力を身につける、星陵流のGSTEAM教育であり、PBLでもある。3年前から探究の土台にSDGsを置き、星陵生の具体的な行動目標としている。徹底した事前学習、グループワーク、日本語・英語で行う学校内外のプレゼンテーションを通して、PBLのレベルを高めてきた。

昨年はコロナ禍で研修旅行が実施できず、下田海中水族館や日本科学未来館とオンラインでつなげて探究学習を行った。秋には流行鎮静のタイミングで2泊3日の下田研修旅行が実現。「下田で何をする?」と話し合うなか、生徒から自発的に「お礼も兼ねて下田海中水族館に行こう」と声が上がる。また観光地・下田の成り立ちを徹底事前調査。SDGs「11.住み続けられるまちづくりを」の視点で、コロナ禍で変容する実際の街を見聞。こうしたフィールドワークの成果を、富士市主催の「富士SDGsラボ」で提言として発表した。

「生徒たちは『いまの科学や事実が永遠に真実かはわからない。思考の根底に常に謙虚さを持って進化を目指そう』と訴えました。中3生も、複数の市と連動してリモートSDGs会議を企画中です。行政や企業とつながりながら、社会にアクションやインパクトを与えることが『星陵中3年間のSDGsステップアップ』のスタイルになりつつあります」

社会の課題を見出し、協働して解決しようとする星陵生の行動力は、地域の行政・企業・教育関係者に強い影響力を持ち始めている。創立以来、アドミッション・ポリシーは変わっていない、と渡邉校長の声に自信がみなぎる。
「求めているのは『学びを楽しみたい』、『高い目標にチャレンジしたい』と変化や成長を望む生徒。それは学校も同じです。より良い学びを模索し、改善を求めて、星陵は進化し続けてきているのですから」

学校法人静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校 http://www.starhill.ed.jp/jhs/