学校散策 掲載:塾ジャーナル2020年11月号/取材:塾ジャーナル編集部

時代の先を見据えた教育を
未来で活躍する人間を育てる

駒込中学校・高等学校

教育の未来を考え、時代を一歩リードする学校改革を行ってきた駒込中学校・高等学校。これからの時代が求めるのは、自ら課題を解決できるアクティブ・ラーニングな子どもたち。学力テストによる偏差値では測れない、多彩な才能を持つ子どもたちに門戸を開こうと、同校では中学入試で算数1科入試をはじめ7種類もの様々な入試を用意している。来春からは中学校のコースを「国際先進コース」に一本化。「Society5.0(超スマート化社会)」を生きる生徒たちに本当に必要な教育とは何か。伝統校でありながら変化を恐れない学校改革は続く。


「優等生」ではなく
「有能」な生徒が育つ

2021年度から中学校で全面実施される「新学習指導要領」。駒込中学校・高等学校の河合孝允校長は「この学習指導要領は、戦後日本の教育の総決算というべきものでしょう。Society5.0という超スマート化社会が到来した時、日本が生き残っていくために必要な教育改革です。本校はすでに10年以上前から時代の流れを見据え、学校改革を行ってきました」と話す。
同校は併設型私立中高一貫の教育特別認可校として、学習指導要領の実施に先駆けて新しいカリキュラムを導入してきた。高校には国際学部や海外留学を目標とする「国際教養コース」、STEM教育を行う「理系先進コース」を設置。中学では「国際先進コース」に、高い英語力の生徒を対象に、学年を超えた英語の先取り授業を行う「スーパーイングリッシュコース」を設けるなど、先陣を切ってきた。

こうした中、駒込の生徒たちはすでに才能を開花させている。昨年開催されたドローンサッカーの大会「ドローンサッカーオープントーナメント大会2019」では、理系先進コースの2チームが優勝と準優勝を独占する快挙を達成。
また、同コースの高3の女子生徒はSTEM授業をきっかけに、数々の企業コンテストに入賞。すでに「高校生起業家」として、2つの会社を立ち上げている。
「本校の生徒は『有能な生徒』であって、優等生ではありません。これからの時代が求めているのは、アクティブ・ラーニング系の子どもたち。自分の持っている知識で、課題を解決できる行動を起こせる人間です」と河合校長。
「これからは基本的な学びはAIが教えてくれます。教師の役割は、学びへのモチベーションを高く持ち、やりたいことを実現していく人間を育てること。本当の教育者が求められる時代になったのです。入学した生徒たちが『駒込と出会えて幸せだった』と思える学校をつくる。この10年が勝負だと考えています」

人と人とをつなぐ
「ハブノード」な生徒が育つ

天和2年の勧学講院の設立から数えて338年もの歴史を持つ同校。河合校長は「本校では伝統的にハブノードな生徒が生まれ育っています」と語る。
「ハブノード(hub node)」とは「つながりの拠点」という意味。クラスの中にその生徒がいるだけで雰囲気が明るくなり、ひとりぼっちの生徒も仲間に引き入れ、自然とみんなが仲良くなる。そんな生徒が駒込で育っているのだ。

高3の国際教養コースの女子生徒がまさにそんなハブノードな存在だった。文化祭や体育祭ではクラス内の女子グループをまとめ、クラス一丸となって行事を盛り上げた。残念ながら、父親の仕事の都合で今秋からアメリカに転居することになったが、その生徒のためにクラスメートが自主的に「ミニ卒業式」を挙行。最後までクラスみんなから慕われていた生徒だった。

現在、多摩美大の教授となっている卒業生もハブノードな生徒の一人。在学中は生徒会長として「制服の自由化」を推進させた。
「教授となった今でも、彼は校長室に遊びに来て、『自分は駒込のおかげで一人前になれた。自分の研究室も駒込のような研究室にしたい』と話してくれます。伝統が受け継がれていることを感じますね」と河合校長は嬉しそうに話す。

中学入試に「算数1科」
合格すると3年間特待(授業料免除)に

来春の入試の目玉は「本科コース」と「国際先進コース」の2コース制をとっていた中学が、来年から「国際先進コース」に一本化すること。コロナ禍を経験し、グローバルな視点やICTの知識について、中学から全員が学ぶべきと刷新した。

さらに新たに3ヵ年特待入試として「算数1科」の入試を導入。この入試で合格すると、中学3年間授業料が全額免除となる。
算数1科の他にもすでに2科、4科、3科(国算英)と適性検査型に加え、特色入試として「プログラミングSTEM入試」や、調べ学習を元にプレゼンテーション資料をつくる「自己表現入試」など、多様な入試を用意している同校。

「受験生には自分の得意なこと、持っている才能でチャレンジしてほしいですね。落とす入試ではなく、才能を伸ばし成長させるための入試と位置付けています」と河合校長は話す。
高校入試でも一般入試に「数・特色」「英・特色」という、英数とポートフォリオ(中学3年間の活動記録と自己推薦)で受験できる入試を設け、多彩な才能の持ち主を迎えたいと考えている。

コロナ禍にあって、休校という前代未聞の事態となった今年。多くの教育機関が試行錯誤をしながら、学びを止めない工夫を凝らしてきた。
河合校長は「本校でも生徒の命を守り、学びを止めない。新型コロナと戦う教師・保護者・生徒の集団をつくろうと頑張ってきました。私は、私学と塾は『民間教育』という共通の土俵にいる同じ仲間だと思っています。こんな時だからこそ子どもたちのために、互いにパートナーシップを取りながら一緒に協力していきたいと考えています」と話している。

御先祖様に感謝する「彼岸会」
今年はライブ配信も

天台宗の学校として宗教行事にも力を入れている同校。9月9日には中学校全体で「彼岸会」が行われた。例年、勧学ホールに3学年全員が集まって行っていたが、今年は3密を避けるため、1年生のみ体育館に集合。2、3年生は各教室でYouTubeのライブ配信を視聴する形となった。

代表生徒3名による献灯・献花・献香が行われた後、厳かな雰囲気の中、座禅で瞑想する「坐禅止観」を全員で体験。最後は、金蔵寺住職の藤田泰道先生による講話に耳を傾けた。
「彼岸とは、春分と秋分の日に御先祖様を敬い感謝をする日です。皆さんは登校すると手を消毒しますね。これは何のためでしょう? 自分のためか、ともに学ぶ友達のためか。両方とも正解です。自分を大切にすることは友達を守ることにもつながります。彼岸会をきっかけに、自分に縁のある人々のために何ができるのか、御先祖様からいただいた命をどう生かしたらいいか、考えてほしいと思います」と穏やかな語り口で生徒に語りかけた。
1年生として初めて全員が集まったというこの日。生徒たちは静かに自分の心と向き合うことができた。

駒込中学校・高等学校 https://www.komagome.ed.jp/