学校散策 掲載:塾ジャーナル2021年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

熱中できることに出会える3年間
才能を見つけ、伸ばす環境がここに

青山学院中等部

1947年、戦後まもない時期に男女共学の中学校として開校した「青山学院中等部」。キリスト教信仰にもとづく、個性や違いを大切にする人格教育を柱とし、自由な校風の中、生徒はのびのびと充実した学校生活を送っている。
新校舎の完成とともに、次世代型学習ができる「教科センター型」を導入。青山学院大学でも採用している授業支援システム「CoursePower」を使い、コロナ禍にあっても学びを止めず、ICT教育をさらに発展させている。この春、新しく中等部部長となった上野亮先生に就任の抱負をインタビューした。


3つのCを身につけた
創造性豊かな人間に

2021年4月に青山学院中等部の部長に就任した上野亮先生。「長年培ってきた、青山学院の自由でのびのびとした校風。これは今後も大切にしていきたいと思っています。それに3つのC、『Communication』(双方向の伝達)『Collaboration』(協働)『Creativity』(創造力)の3つの力を身につけ、自ら考えて表現できる、創造性豊かな生徒を育てていきたいと考えています」と話す。
来るべき未来の社会では自分の頭で考え、判断し、考えを表現できることが求められる。「今後は、生徒同士が協力して学習成果をまとめ、発表する機会をさらに増やしていきたい」と上野先生は語る。

2017年に完成した新校舎は、教科ごとの専門ゾーンを設ける最先端の学校運用方式「教科センター型」。生徒は授業毎に、専門教室に移動して授業を受ける。専門教室の隣には各教科に関する書籍や生徒の作品、展示物、標本などが置かれた「メディアスペース」がある。メディアスペースは、「メディアセンター(図書館)」と連携し、生徒のより深い学びをサポートしている。

しかし、2020年度は新型コロナの感染予防のため、同じ教室で学び続けるスタイルに一時的に変更。コロナ終息後には、以前のようにメディアスペースで調べ物をしたり、発表し合ったりというスタイルに戻していく予定だ。
休校期間中に活躍したのが、青山学院大学でも導入している「CoursePower」という授業支援システム。教師はオンラインで映像や教材を生徒に配信。生徒はシステムを通して、オンライン授業を受けたり、課題を提出したりすることができた。コロナ以前から使用していたが、学校が再開された今はさらに活用の幅を広げている。

「授業中に質問ができなくても、CoursePowerには質問機能があるので、後から教師に聞くことができます。そのため生徒への個別対応がよりきめ細やかにできるようになりました。生徒がどの課題に取り組んだかも確認できるので、学習状況の把握にも役立っています」と広報担当の筒井祥之先生。

2021年度からは、新1年生には1人1台タブレットPCを配布する予定。事前に映像や資料を見て学習し、学校では友達の考えを聞きながら、議論を重ねて内容を深めていく。そんな授業スタイルにもタブレットPCを活用していきたい考えだ。

留学生とランチで国際交流
コロナ禍での文化祭で成長

幼稚園から初等部、中等部、高等部、大学まで一つのキャンパスに集っている青山学院。渋谷駅・表参道駅から徒歩圏内という都心にありながら、キャンパス内には緑が多く、国の登録有形文化財に登録されている建築もある。
そんな落ち着いた環境の中、中等部の生徒には大学生や留学生、研究者らと交流できる機会が用意されている。

週に一度、青山学院大学の留学生がやってきて、昼休みに一緒にランチを食べながら会話をしている「チャットルーム」。欧米のほか、アジアやアフリカなど世界各国からやってくる留学生と、生徒は自由に英会話を楽しむ。リアルな国際交流が日々の中で行われている感覚だ。

月曜〜金曜日の放課後、教員志望の青山学院大学の学生ボランティアがやってきて、勉強を見てくれる「スタディルーム」を実施。どちらも今はコロナのためにお休み中だが、4月以降は少しずつ再開していく予定だ。
この一年、学校行事やクラブ活動が十分にできなかったが、そんな中でも生徒の成長を感じられる場面も多かった。例年1万人以上が来校する一大イベント「中等部祭」は一般公開を中止。そのかわり、クラスが1つのチームとなり、オンラインで各教室をつないでゲームや出し物を行なった。「前例がない中、学友会(生徒会)が中心となって、自分たちに何ができることを考え、新しい方法を生み出したことは素晴らしいと思っています」と上野先生は誇らしげだ。

人と社会が求める
サーバント・リーダーへ

コロナ禍にあって、同校が最も大事にしていたのは「日々の祈り」。人と人とのつながりが遮断され、生徒は自分自身と向き合う時間が多くなった。そんな時、礼拝でのお話を配信し、祈りで生徒たちの心をつないでいた。
「学校での礼拝時間は1日15分。たった15分ですが、静かに自分を見つめ、心を落ち着ける時間を持つことは、中学生という多感な時期には大切なことです。キリスト教の学校だからこそできる心のケア。生徒一人ひとりの心の育成は、青山学院の設立当初から行なってきた大切な教育なのです」と筒井先生は語る。

青山学院は150周年を迎える2024年へ向け、「すべての人と社会のために未来を拓くサーバント・リーダーの育成」をビジョンに掲げている。
リーダーというと人の上に立ち、ぐいぐいと引っ張っていくイメージが強いが、これからの世界が必要としているのは、自分の使命を見出し、人と社会を支えるために行動できるサーバント・リーダー。その土台を育んでいるのが中等部の教育だ。

「これまで様々な生徒を見てきて感じるのは、中3秋以降、生徒はものすごく成長するということ。クラブ活動での個人の実力もそうですし、後輩に対するリーダーシップなど、中等部の最後から高等部に向けてどんどん成長していきます。本校は高校受験がないので、その貴重な時間を奪われることなく、有意義な3年間を過ごすことができます」と上野先生は語る。
筒井先生も「中学受験が終わったら、勉強しなくていいと思われがちですが、実際はそうではありません。一人ひとりが持っている才能に気付き、それを伸ばすためにあらゆる機会がこの学校には用意されています。予め与えられたものではなく、本当の意味での勉強ができる学校だと思います」と話す。

「打ち込めるものと出会える環境が整っている学校です。熱中できること、今まで知らない世界に触れるチャンスが本校にはあります。自分の持つ可能性を広げたいと思っている生徒には、ぜひ来てもらいたいですね」と上野先生は話している。

青山学院中等部   http://www.jh.aoyama.ed.jp